真紀ちゃん ないしょ話

作  竹海 楼蘭


「ただいまー♪」
 珍しく公園に寄り道しないで、まっすぐお家に帰ってきた真紀ちゃん、それもそのはず、今日はママがお休みの日なのです。
「おかえりなさい。おやつあるから、ちゃんと手を洗ってきてね」
 玄関まで出迎えたママは、真紀ちゃんが靴を脱ぎ散らかさないように見張りつつ、スリッパを用意してくれました。
「うん!」
 ちっちゃな体には大きすぎるランドセルの重みも何のその、履き替えたスリッパをパタパタ言わせてお部屋に向かう真紀ちゃんに、ママは微笑ましそうにしています。
 お仕事の都合上、なかなか時間が作れませんが、お休みの日くらいは水入らずで過ごしたいというママの気持ちを、真紀ちゃんはきっと察しているのでしょう。一緒におやつを食べたり、お掃除やお料理のお手伝いをしたり――真紀ちゃん、親孝行さんです。
「あらあら」
 冷蔵庫から取り出したおやつを、キッチンのテーブルに並べているママの耳に、パタパタの音が近づいてきました。給食の時間から、まだそんなに経っていないはずなのに、育ち盛りの真紀ちゃん、よほどおやつを楽しみにしていたと見えます。
「おやつっ♪ おやつっ♪ ――あっ、イチゴさんだぁ!」
 作詞作曲ともに自作で即興の歌を披露しながら、きちんと洗ってきた手を見せびらかすようにしてテーブルについた真紀ちゃんを、カットグラスに入ったイチゴが待っていました。
 真っ赤に熟したみずみずしいイチゴは、ヘタのところがあらかじめ取ってあって、そのままでも食べられます。が、大好物のイチゴを前にして、真紀ちゃん、真剣に悩んでいます。
 そのまま食べるか、コンデンスミルクをかけるか、牛乳とお砂糖を入れて潰してからにするか――ある意味、究極の選択と言ってもいいでしょう。
 ちなみに、真紀ちゃん一家では、パパが潰す派、ママがそのまま派ですから、ここは公平を保つため、コンデンスミルクにしたほうがよさそうです。
「いただきまーす♪ ……あっ!」
 チューブタイプのコンデンスミルクをたっぷりとかけて、先割れスプーンにイチゴをのせた真紀ちゃん、いざ! というところで、大きなお口を開けたまま、動きを止めてしまいました。
「え? ど、どうしたの?」
 急な真紀ちゃんの大声に、イチゴの味を楽しむよりも早く飲み込んでしまったママ、ひょっとして虫でもついていたのかしらと、不安そうにしています。
「……イチゴのおじさん、どうしてるかな」
 天井を見上げながらの真紀ちゃんの呟きに、
「そうねぇ……イチゴ食べたいでしょうから、お供えしましょうか」
 カットグラスをもう一つ用意して、それぞれのグラスから一個ずつイチゴを選り分けると、ママも真紀ちゃんも手を合わせました。
 真紀ちゃんが言うところの“イチゴのおじさん”とは、パパの従兄に当たる人で、今の真紀ちゃん一家があるのはその人のおかげ、というくらいの恩人なのですが、残念なことに、今年の六月に亡くなってしまったのでした。
 奥さんも子供もいなかったおじさんですから、真紀ちゃんが可愛がられたのは言うまでもありません。パパよりもちょっと年上で、イチゴが大好物だったおじさんのことを思い出して、いつになくおセンチな気分の真紀ちゃんです。
「真紀ちゃん、おじさんに元気をわけてもらったんだもんね」
 半年前の、好き嫌いや人見知りの激しかった真紀ちゃんを知っていればこそ、おじさんにいくら感謝しても足りることのないママもまた、ため息混じりに言いました。
 今の真紀ちゃんからは想像もつきませんが、その当時は本当に大人しい子だったのです。それはもう、大人しすぎて逆に手を焼かされるくらいに。
 そんな真紀ちゃんを、卒園までのほんの数週間、面倒を見てもらっただけなのに、どうしてここまで元気になれたのか、不思議で不思議でしょうがないパパやママですが、その理由を訊いたところで、
『な・い・しょ』
 と返されるのが決まりになっています。
 ともあれ、元気に越したことはないので、それ以上深くは追求されることもありませんが、おじさんとの間にあったことだけは、誰にも言えない、今となっては真紀ちゃんだけが知っている秘密なのでした。

 え? どんな秘密か気になるですって?
 それでは、ちょっとだけ昔のお話をしましょう。
 でも、誰にも言っちゃいけませんからね――。


 お空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降り出しそうです。
 それでも、そんなお空を見上げている女の子がいました。
 通園バスの一番後ろの席で、誰ともおしゃべりをせずに、ただじっと窓の外を見ているその子の胸元には、桜の花びら型のワッペンに、平仮名で“まき”とあります。
 同じバス通園でも、他の子とは違って、朝、乗るところと、夕方、降りるところが別々という子でした。
 水色のスモック、黄色いカバン、帽子の両脇から飛び出した、短いしっぽみたいなサイドテール――そう、その子とは、言わずと知れた、半年前の真紀ちゃんです。
 両親が共働きで、なかなか一緒の時間をとれないことも影響しているのでしょうが、極端に人見知りで、組となった今でも、お友達と遊んでいる姿を見かけたことはありません。
 教室の片隅で、一人でお絵描きをしているか、積み木で遊んでいるか――とりわけ問題児でもないだけに、かえって先生方も頭を悩ませている子だったのです。
 先生方からそんな相談を受けてでしょうが、真紀ちゃんの帰り先が変更になったのは、卒園を前にした数週間前のことでした。聞いたところによると、父方の従兄のお家で、両親が帰ってくるまで預かってもらうのだとか。
 とにかく、今日もバスは所定の位置で真紀ちゃんを降ろすと、次の停留所に向けてさっさと出発してしまいました。
「おかえり」
 何でも、パパのパパのお兄さんの子供で、パパがお兄さんと呼んでいる、真紀ちゃんには何だか意味不明なおじさんが、寒空の下で今日も帰りを待ってくれていました。
「ただいま」
 ようやく、そのおじさんを前にして、真紀ちゃんはちょっとだけはにかんだ笑みをこぼしたのでした。

 イチゴのおじさん――パパがイトコと言っていたのと、おやつには決まってイチゴが出てくるので、いつしかおじさんのことをそんな風に呼ぶようになっていました。
 たった一人で住んでいるのがもったいないくらい広いお部屋で、おやつを一緒に食べながら、イチゴのおじさんは色んなお話を聞かせてくれます。
 お米は一粒で作れないから、残すともったいないオバケが出るとか。
 イチゴの粒々に見えるのが、実は一個一個の種だとか。
 牛乳は牛のお母さんが子供に飲ませるのを分けてくれているのだから、美味しくて栄養満点なんだとか――。
 おじさんのお話は、どれもこれもわかりやすくて、そうしよう、その通りだと思えるのだから不思議です。
 今日は挨拶が友達の始まりというお話を聞かされて、明日から頑張ってみんなに挨拶しようと心に決めた真紀ちゃんでした。
「それがいいな。今から友達だと、おじさんくらいの歳になれば、四十年間も友達だっていうことになるからね」
 六歳になったばかりの真紀ちゃんからすると、四十年も友達でいられるというのは、すごいことだとしか思えません。
 こういった具合に、おじさんと一緒に過ごす時間は短くても、日に日に真紀ちゃんを変えてゆくのでした。

 二月にしては珍しく、大雪が降ったある日のこと。
 夜になってさらに勢いを増してきた雪の影響で、電車が運転を見合わせてしまったという連絡がパパから入りました。
 ママも同じ路線を使っていますし、タクシーだととんでもなくお金がかかってしまいますから、真紀ちゃんを迎えにいけないということでした。つまり、今夜はおじさんのお家にお泊りするしかないというわけです。
 しんしんと降り積もる雪のおかげで、いつになく静かな夜をおじさんと二人っきりで過ごすことになった真紀ちゃん、窓辺で雪を見ていたのはいいのですが、すっかり体が冷えてしまったようです。
「よーし、そろそろお風呂にしようか」
 パパとママを心配してなのでしょう、さっきからずっと無口になっている真紀ちゃんを抱っこして、おじさんはお風呂場のほうに向かいました。
 普段はパパと一緒にお風呂に入っている真紀ちゃん、パパ以外の男の人と入るのはこれが初めてですし、お家のお風呂とはぜんぜん勝手が違いますから、緊張するのは当然のこととしても、どこか興味津々といったご様子。
 先にお洋服を脱がせてもらって、次いで裸になったおじさんのほうをじっと見つめているのも、見慣れたパパの裸とは違っていたからに他なりません。
 パパよりもちょっと背が高くて、横幅はもっとあるおじさんの体は、それはもう毛だらけもいいところで、絵本で見た熊さんのようです。
 それに、真紀ちゃんにはついていない、“おちんちん”とパパが呼んでいたものの先っぽを見て、
「やっぱり、イチゴのおじさんだぁ」
 思わずそんなことを言ってしまった真紀ちゃん、そこだけを見れば、確かにイチゴに見えなくもなかったわけですから、いかにも子供らしい反応だったと言えるでしょう。
「イチゴ? ……うーん、イチゴかぁ――」
 どことなく苦笑しつつ、真紀ちゃんを連れてお風呂場に入っていったおじさんは、洗い場のマットの上に座ると、真紀ちゃんを抱っこして、
「――おじさんのがイチゴなら、真紀のここにだってあるんだよ」
 と、ぴったりと閉じ合わさったあそこを両手で広げて、湯気でも曇らない鏡に映し出しました。
 生まれて初めて目の当たりにしたあそこは、おじさんが言うようにイチゴを縦にカットしたような形をしていて、おじさんのイチゴに比べると薄いピンク色を覗かせています。
「……ほんとだ、真紀のもイチゴさんなんだぁ」
 まじまじと鏡に見入っている真紀ちゃん、子供心ならではの発想だったのでしょうが、あろうことかおじさんのおちんちんを掴むと、その“イチゴさん”同士をぴったりとくっつけてしまいました。
「イチゴさんとイチゴさんで仲良しさん♪」
 これにはおじさんもびっくり仰天、目を白黒させています。
 真紀ちゃんにしてみれば、無邪気な遊びといったところでしょうが、奥さんを亡くしてから、そういった機会に恵まれなかったおじさんとしては、起爆剤もいいところです。

 ふにふにしたお肉に挟まれて、ぴたっと吸いつくような形になっているものですから、むくむくと膨れ上がってきたおちんちんに、今度は真紀ちゃんのほうもびっくり。
「おじさんの……おっきくなってきたよ?」
 下から押し上げられて、あそこに先っぽがめり込んでくる違和感に、鏡ごしに訊いてみた真紀ちゃん、おじさんのお顔は湯気のせいもあってよく見えませんでした。
「このままじゃ……真紀のイチゴさん、つぶれちゃうよ……?」
 おちんちんの先っぽが、あそこ全体を巻き込むようにして内側に埋まってゆく寸前、後ろのほうからおじさんの呻き声が聞こえてきました。
びゅぢゅっ! びゅっ! ぷぢゅっ!
「ひゃぁっ!」
 あそこに当たっているおちんちんがびくっと震えたと思った瞬間、おなかの中に温かいものが入ってきた感覚に、思わず大きな声を上げてしまった真紀ちゃんです。
 その反動でか、ようやく離れてくれたおちんちんは、真紀ちゃんの下で二、三度跳ねて、おなかからおっぱいのほうにかけて、白くてべとべとしたものを撒き散らしました。
 パパのおちんちんがそうなったのを、当たり前ですが見たことのなかった真紀ちゃん、何から何まで初めてのことに、ただただびっくり。
「ま、真紀……これは――」
 おじさんも何と言っていいものやら、申し訳なさそうな顔つきになっていますが、
「――真紀のイチゴさんも、おじさんのイチゴさんも、ミルクいっぱいだね」
 何も知らないというのも、この場合は幸いだったのでしょう。指で広げたあそこから、まるでコンデンスミルクみたいに糸を引いている精液を見て、真紀ちゃんはそんな風に言ったのでした。
「……でも、あんまりおいしくない」
 頬っぺたのほうまで飛んだ精液を、ためしにと口に運んではみたものの、コンデンスミルクみたいな甘さはありません。
 どちらかというと、牛乳を初めて飲んだときみたいな味がしましたが、牛乳が美味しいと思えるようになったのと同じように、このミルクも美味しいと思えるようになるのかもしれない――ふと、そう思い至った真紀ちゃんでした。
 いずれにせよ、何も知らないそんな仕草が、男の人にとってどんな影響を及ぼすのか――おじさんの目の色を見れば、一目瞭然でしょう。
「真紀、好き嫌いしちゃいけないよ」
 ずっとご無沙汰していた快感を呼び覚まされて、おじさんの声もどこか上ずっています。
「う、うん……」
 鼻先に突きつけられたおじさんの“イチゴさん”には、まだミルクが残っているようです。このミルクも、おじさんが自分のために分けてくれたのだとしたら、栄養満点に違いありません。
ちゅぴ……っ……つっちゅうぅうぅうぅ〜。
 おちんちんを両手で掴んで、ストローを吸うみたいにして残った精液を吸い出す真紀ちゃん、これがどういう行為なのか、まるでわかっていないようです。
 こうして、真紀ちゃんのエッチは第一歩を踏み出したのでした。

 それからというもの、おじさんのお部屋では、“イチゴさんミルク”を飲むのが日課のようになりました。
 さすがに美味しいと思ったことはありませんが、おじさんにイチゴさんを指でくにゅくにゅされたり、舌でぺろぺろされたりすると、美味しくなくても飲みたいと思えるのですから不思議なものです。
 それに、真紀ちゃんのイチゴさんも、今では弄られると蜜を出すようになりました。おじさんが言うところの、サクランボさん――おっぱいの先っぽ――を弄られるのも、最近のお気に入りです。
 日に日に元気になってゆくのと同じくらい、エッチなことを開発されつつある真紀ちゃん、もちろん、このことはパパやママには内緒にしています。
 だって、おじさんとの約束ですし、約束を破るのは一番いけないことだって教えられたのですから――。

「そうか、真紀は男の子が嫌いか」
 ベッドの中で、おじさんは少し笑ったようでした。
「うん。だって、すぐに意地悪するんだもん」
 これが二度目となるお泊り――パパは出張、ママは歓送迎会なのです――で、たっぷりと可愛がってもらった余韻が抜けきらないお顔を、真紀ちゃんはちょっとだけ膨らませてみせました。
 おじさんの言った通り、挨拶をするようになってから、お友達はたくさん増えましたが、男の子だけはどうしても苦手な真紀ちゃんでした。
 これまで一緒に遊べなかった反動なのでしょうが、鬼ごっこをするとすぐにタッチされたり、せっかく作った砂山を崩されたり、おじさんにしてみれば思わず笑ってしまうような意地悪の内容でしたが、当の真紀ちゃんにとっては死活問題なのでした。
「でも、おじさんも男の子だったんだよ? 真紀はおじさんのこと嫌いかい?」
「ううん、好きだよ」
 即答した真紀ちゃんに、ここのところ痩せてきた感のあるおじさんは、すごく嬉しそうに頷きました。
「男の子はね、女の子には絶対に敵わないんだよ」
 裸んぼの真紀ちゃんを抱き寄せて、
「だって、女の人から産んでもらうんだし、女の子はここでおちんちんを飲み込んじゃうんだからね」
 あそこを指でくちゅくちゅしながら、おじさんはそんなことを言いました。
「ほんと? ……っ! ……くぅん……」
 指が潜り込んでくる感覚に、びくっと腰を浮かせた真紀ちゃん、くちゅくちゅの音が大きくなるにつれて、息遣いも次第に荒くなっています。
 全身がほんのりと桜色に染まって、おっぱいの先っぽもつんと尖って、お顔もとろんとしてきて――やがて、全身から力が抜けた頃、おじさんはおちんちんのさきっぽをそっとあそこにあてがいました。
「……真紀、これで最後にするから――」
 おじさんが言ったことも、真紀ちゃんの耳には届いていませんでした。
みりっ……!
「ぃぎっ!」
 急にあそこに走った痛みに、思わず悲鳴を上げてしまったのも束の間、
みゅぢっ……みぢぃっ……!
「いっ! ぃたいっ……! あぅうっ!」
 おちんちんの先っぽが、あそこを押し分けて突き進んでくる痛さ――ですが、どこか必死なおじさんの表情に、真紀ちゃんは怖さを覚えませんでした。
……ぶづっ!
「――あ……ッ!」
 おなかの中に、おじさんが入ってくる痛みが頂点に達し――小さな声を上げたそのときには、おなかはおちんちんの形に盛り上がっていました。
「……はーっ……はーっ……はーっ……」
 真紀ちゃんの中には、ずきずきと脈打つような痛さと熱さだけしかありません。
 ゆっくりと息を吸って、吐いて、吸って、吐いて――激痛は一瞬のこと、鈍痛と息苦しさの中で、真紀ちゃんは恐る恐るおなかに手を当てました。
「……ほんとだ……」
 おへそのちょうど真下あたりに、おちんちんの感触があります。声を出して初めて、涙をこぼしていたことに気がつきました。
 おじさんは何も言わずに、ただただ真紀ちゃんを抱きしめているばかり。胸毛がくすぐったくても、その奥から聞こえてくる心臓の音に、真紀ちゃんはじっと耳を傾けています。
とくん……とくん……とくん……とくん……とくん……とくん……。
ずきん……ずきん……ずきん……ずきん……ずきん……ずきん……。
 おじさんの心臓の音と、あそこの痛さが同じリズムを刻んでいます。痛いことに変わりはありませんでしたが、ちょっとだけ余裕の出てきた真紀ちゃん、おじさんの頭を撫で撫でしてあげました。
 どうしてそんな風にしてあげようと思ったのかはわかりませんが、体も大きくて歳もずっと離れているおじさんが、このときばかりは小さな男の子みたいに思えてくるから不思議でした。

『男の子はね、女の子には絶対に敵わないんだよ』

 さっき聞いたお話を思い出して、おじさんはやっぱりすごいんだ、という思いを新たにした真紀ちゃんでした。

 どれくらい、そうしていたでしょうか。
 鈍痛も疼痛くらいに軽くなって、真紀ちゃんからは見えませんでしたが、あそこからの血もようやく止まった頃、おじさんはようやくお顔を見せてくれました。
「……真紀、ごめんな。痛かっただろう?」
 真っ赤な目でそう言われたものですから、真紀ちゃんとしては弱気なことは言えません。
「ううん、へっちゃらだよ。……ちょっと痛かったけど、嫌じゃなかったもん」
 本当はすごく痛かったのですが、大好きなおじさんのおちんちんを迎え入れられたことに比べれば、ぜんぜん大したことはありませんでした。
 そうか、と笑い顔半分になって、今度はおじさんのほうが真紀ちゃんを撫で撫で。
「えへへ」
 大きな手が嬉しくて、思わず頬擦りなんかしている真紀ちゃん、ちょっと前に比べれば、ずいぶんと笑うようになりました。
「真紀も元気になったなぁ」
「うん。おじさんが元気を分けてくれたんだもん」
 そんな真紀ちゃんを、おじさんも目を細めて眩しそうに見つめています。
「そうか……じゃあ、もういいかな――」
 その呟きは、おじさんがゆっくりと動きはじめたことで、真紀ちゃんの耳には届きませんでした。
ずっ……ずっ……ずっ……ずっ……。
「んっ……んっ……んっ……んっ……」
 おなかの奥をこね回すような小さな振動でも、真紀ちゃんには大きな衝撃となって襲いかかってきます。
「まだ……痛いか?」
「うぅん……だい……じょぶ……」
 言葉が途切れ途切れになっていますが、そのぶん、首を横に振って答えた真紀ちゃんに、おじさんはさらに前後の動きを深いものにしました。
ずんっ……ずんっ……ずんっ……ずんっ……。
「んぅっ……んぅっ……んぅっ……んぅっ……」
 ちょっぴり痛いのと、それ以上の熱さがおなかに響いてきます。このままだと離れていってしまいそうな気がして、おじさんの背中に両腕を、太腿に両足を回した真紀ちゃん、しっかりとしがみつきました。
 ベッドの上にいるはずなのに、まるで浮き輪で波に揺られているときみたいな、そんな感覚がおなかの奥のほうからしています。おじさんにぎゅって抱きしめていてもらわないと、今にもさらわれてしまいそう――。
ずぷぅっ! ずぷぅっ! ずぷぅっ! ずぷぅっ!
「んぁあっ! んぁあっ! んぁあっ! んぁあっ!」
 先っぽだけを残して抜かれたおちんちんが、再びおなかの奥を突き上げてくる、その強烈な衝撃といったら、まるで津波のよう。
 おじさんの荒い息遣いと、真紀ちゃんの甲高い声、あそこ同士がくっつき、離れ合う湿った音が、静かなお部屋中に響き渡って、冬なのに二人とも汗だくになっています。
「真紀……ッ!」
 名前を呼ぶ声と同時に抱き起こされて、おちんちんがあそこの奥に到達した途方もない衝撃が、とうとう真紀ちゃんをさらっていってしまいました。
 ジェットコースターが下るときのような、ふわっとした感覚が何倍にもなって襲ってきて――思わず離してしまった手を、おじさんが掴まえてくれました。
「――あっ……」
 両手の指同士が絡まり合って、大きく背中を反らした真紀ちゃんのおなかに、
 どびゅっ! びゅりゅうっ! びゅくんっ! びゅっ!
 直接注ぎ込まれる精液の、その熱さといったら!
「……ぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ――ッ!」
 背筋を何度も震わせて、ちっちゃな子宮で精液を受け止める真紀ちゃんに、何もかもが初めての経験は、その感覚だけを絶対の快感として刻みつけたのでした。

「真紀のイチゴさん……潰れちゃったの?」
 小さくなったおちんちんが抜かれた後、ぱっくりと口を開けてピンク色の精液を溢れ出させるあそこを見て、真紀ちゃんは痛ましそうに言いました。
 おなかはまだ熱を持っていて、体はへとへと、手足はがくがくします。眠くて仕方ありませんでしたが、それだけは聞かずにいられませんでした。
「大丈夫。潰れたりしてないから、安心しておやすみ」
 パジャマの上着だけを着させて、おじさんはシーツの真っ赤な染みを毛布で隠しながら答えました。
 ほどなくして、すうすうと寝息を立てはじめた真紀ちゃんのほうを向いて、
「……ありがとう、真紀。ごめんな――」
 そう言ったおじさんの顔は、暗がりの中でよく見えませんでした。

 おじさんが入院したのは、真紀ちゃんの入学祝いにランドセルをプレゼントしてくれた、その次の日のことでした。
 大きな手術を何回もしなければならないということで、お見舞いに行けたのは五月に入ってからでしたが、お休みの日なのにランドセルを背負って、イチゴをおみやげに持っていった真紀ちゃんは、痩せてしまったおじさんが、最初は誰なのかわかりませんでした。
「はは……真紀に元気を分けすぎたかな」
 病室のベッドの上で、点滴をいっぱい受けながら、おじさんの声だけは元気だった頃と変わっていません。
「真紀も元気になったから、おじさんもイチゴ食べれば元気になれるよね?」
「ああ、約束するよ――ランドセル、よく似合うじゃないか」
 イチゴを受け取って、サイドボードの上に載せたおじさんは、大きなランドセルを物ともしない真紀ちゃんに笑いかけ、少し咳き込みました。
「……ずっと前のこと、ごめんな」
 ベッドに横になったおじさんが言うところの『ずっと前のこと』に、ようやく思い当たった真紀ちゃん、
「ううん――あ、あれで元気になれたこと、ちゃんと内緒にしてるよ」
 パパやママにも内緒にしている『元気の秘訣』を思い出して、ちょっぴりもじもじそわそわ。
「そうか……えらいな、真紀は。……真紀に覚えていて欲しくてやったことだけど、あんなことしなくても、真紀はおじさんのこと忘れたりするはずないもんなぁ」
「うんっ♪」
 にっこり笑った真紀ちゃんに、おじさんも笑い返してくれて――。

 その次に会ったとき、おじさんはもうお話のできない人になっていました。
 飾られた写真とは別人みたいに痩せ細ったおじさんが亡くなったこともそうですが、元気になるという約束を破られたことが悲しくて、お葬式の間、真紀ちゃんはずっと泣いていました。
 入棺のとき、お花と一緒に大好きだったイチゴを添えた真紀ちゃんに、おじさんは「ごめんな」と言っているようなお顔だったので、
「ううん……天国でイチゴさんいっぱい食べてね。ずっと……忘れないからね」
 と、精一杯の笑顔でお見送りしたのでした。

「ん〜っ、おいし〜♪」
 甘酸っぱいイチゴにご満悦の真紀ちゃん、甘酸っぱい思い出が蘇ってきても、おじさんに分けてもらった元気があるから、平気、へっちゃらです。
 たまに元気すぎて羽目を外したり、色々なことに巻き込まれたりもしますが、どんなときでも元気印なのは、きっとお空の上からおじさんが見守ってくれているからなのでしょう。
 といったところで、イチゴにまつわる今回のお話はおしまいです。
 内緒のお話ですからね? 誰にも話しちゃいけませんよ?


おわり