おしり な しおり れべる 2

作  竹海 楼蘭

 恒例の水曜日がやってきました。
 “いよいよ”というか、“とうとう”というか、長かったようで短かったような、とにかく栞ちゃんにとって、待ち望んでいた曜日の到来です。
 楽しみのあまり、昨夜なかなか寝付けなかったせいもあって、授業中に何度もあくびをしたり、給食の時間も上の空だったりと、日増しにいけない方面に目覚めつつある栞ちゃんですが、今からこんなだと、この先が思いやられます――ええ、もちろん楽しみな方面で。
 一番のお友達の真紀ちゃんにさえ、日舞のお稽古事のある日だと嘘をついてまで、お兄さんにお尻を可愛がられたい栞ちゃん、心なしかお家へと向かう足取りも速くなっているような気が……。
 お家に着いたら着いたで、しなければならないことはたくさんありますが、逸る気持ちを抑えきれずにいる栞ちゃんにとって、これまた恒例のお兄さんからの宿題は、その中でも最優先事項に違いなかったのでした。

「……ぁうぅ……」
 息も絶え絶え、という表現こそ、今の栞ちゃんを端的に言い表しているものはなかったに違いありません。
 お家からお兄さんのお部屋まで、何度も何度も立ち止まっては身震いして、それでもなお、一歩一歩、足を前に踏み出して――ようやくマンションに辿り着いたところで、上の階で停まっていたエレベーターを、これほどまでに恨めしく思ったことはありませんでした。
 というのも、お兄さんの言いつけに従って、お家でお浣腸をしてきてからここまで、我慢に我慢を重ねて歩いてきたわけですから、限界寸前にまで追い詰めら れた栞ちゃんのお顔は、元来の色白を通り越して蒼白に近く、お尻に込めていた力も秒刻みでリミットに近づいています。
(はやく……はやくぅ……)
 本日の宿題は、“お浣腸したままお部屋までくること”という、かなり難易度の高いものだったために、早く楽になりたい一心から、エレベーターのボタンを無意識のうちに連打したりしている栞ちゃんでした。
(あと……もうちょっと……うぅ……おなか……いたいよぉ……)
 あと少し、という自分への励ましも、いざお部屋を目の前にすると限界に拍車をかけるばかりで、いま一歩がものすごい重労働に感じられた栞ちゃん、
 ピンポーン……。
 辛うじてインターホンのボタンを押せたものの、この状況を救ってくれるはずのお兄さんは、なかなかどうして出てきてくれません。
(……えぇっ……どうしてぇ……)
 もしも、本当にお留守だったりしたら――考えたくはありませんでしたが、そうだった場合に起こりうる最悪の事態が頭の片隅をよぎって、目の前が暗くなってゆきます。
 ぶっ……ぶぴゅ……。
 堪えきれずに漏れ出した浣腸液が、やけに生温かく感じられました。
 もういいよ、と言わんばかりにパンツに染みを作ってゆくその温もりは、なぜか甘く切なく、陶酔感さえ覚えるものがあったこともまた、事実だったのでした。
「……ぁ……ぁあぁ……もぅ……」
 とうとうドアの前でへたり込んでしまった栞ちゃん、ぞくぞくっとしたものが背筋を駆け上がってくるのに任せて、生理的なものからくる抗い難い衝動に、ついその身を委ねてしまいました。
「……ぁは……」
 ぶびゅっ……みゅちみゅちみゅち……。
 コンクリートの固い床と、コットンのパンツに包まれた柔らかいお尻との間で膨れ上がってゆく、どこか懐かしくもある異質な感覚に恍惚とした表情を浮かべながら、ようやく出迎えてくれたお兄さんの前で、軽く昇りつめてしまった栞ちゃんでした。

 シャワーと石鹸でお尻の汚れを洗い流してもらっているうちに、斜めがちだった栞ちゃんのご機嫌も元に戻ってきたようです。
 だって、あんなに苦しくて不安で恥ずかしい思いをしたたのに、わざと放っておかれたようなものですから、いつもよりもっといっぱい可愛がってもらわなければ、割に合わないというものです。
「……む〜」
 珍しくぷんぷんしている栞ちゃんですが、こんなお顔もお兄さんの前だからこそ。
 物心ついたときから、お家でもお外でも“聞き分けの良い大人しい子”と評判の栞ちゃんですが、そうは言ってもまだまだ六歳の女の子、わがまま盛りには変わりありません。
 ですが、したい放題に振る舞ったり、聞き分けのないことを言ったりすることで、周りの人からの期待を裏切ってしまうのでは、という思いやりが、幼心にブ レーキをかけてしまうのでしょう、周囲からの評判が上がるにつれて、自分自身の気持ちはどんどん置き去りにされてゆくのにも気づかずにいた矢先――。
 おトイレの改装によって、図らずも覚えてしまったお尻弄りと、それが縁結びとなって巡り会えたお兄さんとの度重なるエッチで、“本当の自分”に目覚めて しまった栞ちゃん、そんな自分を見つけ出してくれたお兄さんの前だからこそ、ありのままの自分でいられるのでした。
「ほら栞、おいで――」
 お兄さんに手招きされて、向かい合わせになる格好で膝の上にちょこんと座った栞ちゃんのおなかに、おちんちんが触れてきます。
 さほど筋肉質ではないものの、それなりに引き締まった胸に頬っぺたを寄せると、お兄さんの心臓の音が聞こえてきて、ただ抱き合っているだけなのに、自分にまでそのどきどきが移ってくるような気がしました。
「ごめんね。恥ずかしかっただろ」
 頭を撫で撫でされて、一度は小さく頷いた栞ちゃんでしたが、すぐに首を横に振って、
「……うん。……でもね、ちょっぴり……どきどきしたの」
 正直に答えると、お兄さんは『それでこそ僕の栞だよ』なんて嬉しいことを言ってくれちゃって、あまつさえぎゅっと抱きしめてくれたのでした。
 幼稚園に入った頃にはもう、おもらしやおねしょから卒業できていた栞ちゃんも、お兄さんの前でだけは例外のようです。普段とは違う、子供っぽい地の部分 が出せるとでも言いましょうか、後始末をしてもらうのだって、裏を返せば可愛がってもらえるということに繋がりますから、恥ずかしいと思うことはあって も、嫌だと思ったことなどありません。
「……でも、おもらししてどきどきするなんて、栞はいけない子だね」
 ぺちっ!
 台詞とは裏腹に優しい声と、音に比べれば軽い力でお尻を叩かれて、思わず胸がきゅんとなってしまった栞ちゃん、お兄さん以外からは言われたことのない“いけない子”という響きに、背筋がぞくぞくしてくるのを覚えました。
「栞……いけない子なの?」
「うん。いけない子だ」
 ぺちんっ!
 もう一度、今度はさっきよりも強くお尻を叩かれて、痛かったのはほんの一瞬のこと、じんじんするような感覚だけが後に残ります。
 ぺちんっ!
 その感覚が薄らいでいかないうちに、さらに追い討ちをかけられて、すぐさま振り出しに戻されてしまった栞ちゃん、これまでこんな風に叱られたり、お尻を叩かれたりしたことなど、ただの一度たりともありませんでした。
「いけない子は、歳の数だけぶつからね――それっ!」
 ぺちんっ!
 もちろん、お兄さんが本気で言ったり叩いたりしていれば、今頃わんわん泣いていたでしょうから、それくらいのことは察することのできた栞ちゃんですが、 お風呂場に響き渡る甲高い音と、じんじんする感覚に導かれるままに、いつしか荒い吐息の中にもひっくひっくとしゃくり上げる音が混じってきて――。
「……ふぇえぇん……っく……ひっく……」
「よしよし――僕は“いい子”の栞より、“いけない子”の栞のほうが好きだからね」
 胸に顔を埋めて泣く栞ちゃんを、そのまま抱っこしてお風呂に入れてやりながら、お兄さんはあやすように言いました。
 思えば、こんな風に人前で泣いたのは、ずいぶんと久しぶりのような気がします。期待通りの“いい子”でいようとするあまり、年齢相応に怒ったり泣いたり、あるいは笑ったりすることすらも、小学校に入る前に置き忘れてきたのかもしれません。
 一週間に一度とはいえ、これまで何度も栞ちゃんを相手にしてきて、抑圧された感情が隠されていることを見抜いていたのでしょう、荒療治は毎度毎度のことながら、栞ちゃん“らしさ”を取り戻してあげるなんて、なかなか心憎いことをしてくれるお兄さんです。
「痛かった?」
 栞ちゃんのお顔を上げさせて、頬っぺたに伝う涙を舌でそっと拭ってあげながら、お兄さんはちゅっちゅっとキスの雨を降らせました。
「ううん……痛くないのに泣いちゃった……ヘンなのぉ」
 くすぐったさもあって、くすくすと笑う栞ちゃんの表情は、涙の跡さえ残っていましたが、これまで見たこともないくらいに晴れやかなものでした。

 それから、お風呂の中で、今までにないくらい色んなおしゃべりをしました。
 お家のこと、ご両親のこと、お友達のこと、学校のこと――これまで話していなかったのが不思議なくらい、後から後から話題が溢れてきて、お話があっちこっちに飛んだりしましたが、お兄さんはちゃんと最後まで聞いてくれました。
 普段、物静かな子だと思われているのが、まるで嘘みたいです。自分でも、ちょっぴりびっくりするくらい、おしゃべりに夢中になっている栞ちゃんでした。
 そんな中で、改めてわかったことが一つあります。
 お尻のこともそうですが、自分でも忘れかけていた“本当の自分”を見つけ出してくれるお兄さんは、栞ちゃんにとって、やっぱり特別な人に違いなかったのでした。

 せっかくいい雰囲気なのですから、場所を移すよりはと、二人はこのままお風呂場でエッチをすることにしたようです。
したようです、というのは、おしゃべりからエッチへの移行があまりにも自然で、いつの間にかそうなっていた、というのが、この場合は正しい表現なのでしょう。
「栞のアナルはいつ見ても可愛いね」
 浴槽の縁から身を乗り出して、タイルに両手をついた格好の栞ちゃんのお尻は、後ろに回ったお兄さんの両手で左右に広げられていて、可愛らしいつぼみが全開になっています。
 うんちをする汚いところのはずなのに、お兄さんはいつもそう言ってくれますし、その証拠にキスまでしてくれますから、栞ちゃんの心に芽生えた恥ずかしさは、やがてどきどきに変わっていくのでした。
 れりゅ……ぬりゅぅ……りゅぷぅっ……。
 お尻の穴から力を抜くと、お兄ちゃんの舌が待っていましたとばかりに潜り込んできます。入口(出口?)の周りを丹念に舐められているうちに、お尻の穴はつぼみが花開くように、ふっくらと盛り上がってきました。
「ほーら、ぬぷぬぷって余裕で入ってくよ? 栞ってば、ほんとにアナルっ子だね」
「う……ぅんんぅ……きもち……いぃよぉ……」
 入れ違いに今度は中指が入ってきて、栞ちゃんの声もワンオクターブ高まります。狭い直腸をぐにぐにされただけで、ねっとりとした腸液が奥のほうから溢れ出してくるのが、栞ちゃんにも感じられました。
 あそこと同じように、いまやお尻も濡れるようになってしまった栞ちゃん、にゅぷにゅぷという恥ずかしい音に、気持ちは昂ぶるばかり。
 ところが――。
「……おや? 先っちょに何か当たってるけど――なんだろうね、これ」
 これ見よがしにわざとらしい言い回しをするお兄さんってば、こういうときだけはものすごく意地悪です。
「……やぁんっ!」
 おもらしが途中だったおかげで、まだおなかの奥にうんちが残っていたのでしょう、おかっぱ頭を左右に振っていやいやをしたところで、お兄さんを喜ばせるだけだということに気づくには、もうちょっと大人にならないといけないみたいです。
 ともあれ、お兄さんのぐにぐにでもって、忘れかけていた感覚がまたまた蘇ってきた栞ちゃん、恥ずかしくて仕方ありませんでしたが、お尻でエッチをするためには避けて通れないと知ったようで、
「……ぅんち……」
 ぼそぼそっと小声で伝えましたが、格好が格好なだけに、お兄さんには聞こえなかったのか、あるいはもっと意地悪したいと思ってか、
「ん? なんだって?」
 と訊き返されたことで、いよいよもって覚悟を決めなければならなくなった栞ちゃん、
「……うんちぃっ!」
 お風呂場に響き渡るくらいに大きな声で、はっきりとそう答えたのでした。
「はい、よくできました。――じゃあ、お浣腸しようね」
 鏡ごしに非難がましい視線を向けてくる栞ちゃんに構わず、お兄さんはお待ちかねともいえる提案をしてきました。

 が、おもらしの現場や泣き顔など、さっきから恥ずかしいところばかり見られているのに、さらにお浣腸から続く一部始終を拝まれてしまうとあっては、栞ちゃんとしてはちっとも面白くありません。
「……う゛〜」
 睨みつけたところで効果がないのはわかりきっていますから、せめてもの抵抗とばかりにざぶんとお湯に浸かってしまった栞ちゃん、それでもお浣腸の誘惑に勝てずにちらちらと視線を向けてくるあたり、なかなかどうして可愛らしいじゃありませんか。
「ほら、お浣腸してほしくないの? だったらやめるけど?」
「……やめちゃやだぁっ!」
 根比べにしてはあっけないほど早くに勝負がついて、浴槽から上がりかけていたお兄さんの腕に、ひしと縋りついてしまった栞ちゃん、
「あれ? どうしたの、栞」
 あくまで平然を保っているお兄さんに根負けして、うるうるした瞳を上目遣いにさせながら、言わなければならない言葉を探しているかのようでした。
「……お浣腸してくれなきゃ……やだぁ」
 時間がかかった割には、ずいぶんとシンプルな敗北宣言に、内心ガッツポーズをしているに違いないお兄さんってば、あれだけ意地悪をしておいて、今度は手のひらを返すように優しく抱っこなんかしてあげているのですから、ずるいったらありゃしません。
 そんなですから、ついさっきまでのことも忘れて、膝の上で大人しくなっている栞ちゃん、すっかりお浣腸慣れした今でも、自分でするのとお兄さんにされるのとでは、気持ちよさがぜんぜん違うのですから、体は正直です。
「じゃあ、お尻の力抜いて」
「うん……」
 お風呂場なだけに、またシャワーでお浣腸されるんだろうかと、期待で胸がどきどきしてきた栞ちゃん、けれどお兄さんはというと、そのまんまの格好で、おちんちんをお尻の穴にあてがってきたのですから、びっくりもいいところ。
 ぬぷぅ……っ。
「……え? ええっ……?」
 舌と指で充分に解されていましたから、おちんちんを受け入れるのはさほど苦にならなくても、お浣腸よりも先におちんちんを入れられるなんて、夢にも思っていなかったに違いありません。
 そのおかげで、気持ちよさよりもびっくりのほうが勝ってしまった栞ちゃん、せっかくだからお浣腸してほしかったな――なんて、ちょっぴりがっかりした、そのときです。
「……なんだか、おしっこしたくなってきたな。……栞、どうしようか?」
 悪戯っぽいお兄さんの言葉は、ぶるっと背筋を震わせた栞ちゃんの答えを見越した上でのものだったのでしょう、きゅうっと締めつけてきたお尻の感触に、うんうんと頷いたりしています。
「え、えっと……えっとぉ……」
 しどろもどろになりながら、栞ちゃんはまず状況の整理からはじめることにしました。
 お兄さんのおちんちんは、今まさに栞ちゃんのお尻に入っているわけで、男の人がおしっこするといったら、当然おちんちんからするわけで、お兄さんがおしっこするということは、つまり――。
「――お兄ちゃん……栞に、おしっこでお浣腸して……」
 そんなはしたないお願いも、お兄さんならちゃんと応えてくれると知っていればこそ。
 お尻の穴から、おなかの中に直接おしっこされる――栞ちゃん風に言うなれば、これほど『ヘン』極まりない行為はなかったことでしょうが、『ヘン』なことをされるのに順応してしまった心は、期待を高めるばかりで嫌悪感など微塵も覚えませんでした。

「栞の中におしっこするなんて、すごくどきどきするよ」
 やや上ずった声を聞いて、お兄さんも同じ気持ちでいることを知った栞ちゃんは、なんだか誇らしい気持ちになりました。気持ち同士が結ばれているのであれば、どんなに『ヘン』なことでもへっちゃらだって思えるくらいに。
「……いいよ。栞の中、いっぱいにして――」
 膝の上でやや前屈みになって、タイルに両手をついて、お尻だけじゃなく体全体の力を抜いて、受け入れ態勢もばっちりになったところで、お待ちかねの感覚はやってきました。
 ……じょろっ……じょっ……じょぼぼっ……じょぼぼぼぼっ……。
「あっ……んぅっ!」
 どうやら、勃起したままだとおしっこもしづらいようで、断続的に注がれる熱い感覚は、どこか射精されるときにも似ていました。
 じょぼぼぼぼぼぼっ……じょぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ……。
「おしっこぉ……おしっこいっぱい……いっぱい入ってくるよぉっ!」
 最初からこうするつもりだったのか、あるいはよっぽど我慢していたのか、勢いよく注がれるおしっこの量といい、おなかに染み渡ってゆくその熱さといい、病みつきになってしまいそうです。
「……っはぁ……あぁん……」
 ぶるぶるっと全身を震わせて、おしっこを一滴残さず受け入れている栞ちゃんたら、それはもうよだれまで垂らして、エロすぎるったらありゃしません。
「今、きゅうってなったよ。……おなかの中におしっこされるの、そんなに気持ちいい?」
「ぅん……あっつぅい……」
 温度だけで言うなら、お湯のほうがいくらでも調節がききますが、不規則な量と勢いでもって注がれるおしっこのほうが、より熱く感じられます。
 それに、お兄さんの体温そのものが伝わってくるような気がして、おなかのぎゅるぎゅる感も、いつもと違ってごく穏やかなものでした。
「おなかの中で栞のうんちと僕のおしっこが混ざってるの、わかる?」
 ぎゅるぎゅるぎゅる〜っという音を聞き漏らさず、栞ちゃんを抱き起こしたお兄さんは、そのまま両足を抱え上げると、鏡に繋がり合った部分を大写しにしました。
 ぷぢゅっ……ぶちゅっ……。
 お兄さんに言われるまでもなく、あぶくとなって漏れてくるおしっこの色と、立ち込める匂いが、お尻の中がどうなっているのかを知らしめてきます。
「お兄ちゃぁん……栞も……栞もおしっこしたいよぉ……」
 切なさに満ちた声は、けれど確かな愉悦を秘めていて、その瞬間を心待ちにしているかのようでした。
「いいよ……ぜんぶ出しちゃえ――」
 ……ぬぽんっ!
 お兄さんからの許可が下りた、そのとたん、
 ぷっしゃあぁあぁあぁあぁあぁ……っ!
 ぶっびゅうぅうぅうぅうぅうぅ……っ!
 おちんちんが引き抜かれるやいなや、あそことお尻、両方からおしっこが盛大に吹き出しました。
あそこからのおしっこは透明に近い放物線を描いて、お尻からのおしっこは濁って一直線に、それぞれタイルに飛沫を跳ね上げさせます。
「出ちゃうっ……うんち……出ちゃうよぉっ……!」
ぶびぃっ……むりゅむりゅむりゅっ……。
 鈍い破裂音に続いて、ぽっかりと口を開けたお尻の穴から顔を覗かせたうんちが、あれよあれよという間にタイルの上にこんもりと小山を築いてゆきます。
 汚くて恥ずかしいことをしているはずなのに、その光景から、なぜか栞ちゃんは目を離すことができませんでした。
「まだ……っ……出るぅ……っ! お兄ちゃん……おにぃ……ちゃぁんっ!」
「大丈夫、栞の恥ずかしいところ、ちゃんと最後まで見ててあげるから――」
 ちゅっ……。
 このまま『ヘン』になっても安心していられるように、お兄さんにしっかり捕まえていてほしかった栞ちゃんのお願いは、キスという形で成就されました。
 はしたない音も、鼻につく匂いも、シャワーのお湯に流されてゆく汚泥も、泣いちゃいそうなほどの恥ずかしさも、何もかもがキス一つで消え失せてゆくのを感じながら、すべてをお兄さんに委ねきった栞ちゃんは――。

「栞、さっきイってただろ」
 つんと頬っぺたを突っつかれて、それまでぼーっとしていた栞ちゃんは、ややあってこくんと頷き返しました。
 隠したところでお兄さんはお見通しでしょうし、本当にそうだったのですから、返す言葉の一つすら浮かんできません。
「いいんだよ。……それくらい栞のレベルが上がっているってことだからね」
「れべる?」
 何のことかわからず、鸚鵡返しに訊いた栞ちゃんに、お兄さんはうーんと唸っていましたが、
「恥ずかしくても、嫌じゃなかっただろ? ……いや、恥ずかしくって、ヘンになっちゃいそうだったのかな?」
 なんて、さらに訳のわからないことを口走るばかり。
 でも、何となくお兄さんの言うことが理解できるのは、やっぱり『れべる』が上がったからなのでしょう。どんなに恥ずかしいことでも、お兄さんがちゃんと見守っていてくれるのなら、ちっとも嫌なことなんかないっていう風に思える栞ちゃんでした。
「栞……」
 シャワーで洗い流された汚れは見る影もありませんし、換気扇を最大に回しているおかげで、もう匂いすらこもっていないお風呂場の中、ぴちょんぴちょんと水滴の垂れる音が何度かした後で、
「……一つ訊くけど、僕じゃなくてもこんなことしたいって思う?」
「ううん」
 間を置いた唐突な質問に、はっきり、きっぱりと否定の意を伝えた栞ちゃんに、お兄さんはほっとしたような、ものすごく満足した笑みを浮かべたのでした。
 他ならないお兄さんだからこそ、一番恥ずかしいところだって見られていたいと思うのであって、他の人の前でするなんて、これっぽっちも考えられません。
 なんでそんなわかりきったことを訊いてくるんだろうと、ちょっぴり首を傾げた栞ちゃん、それでもお兄さんが嬉しそうにしているので、つられてはにかんだ笑みを浮かべました。
 どこかくすぐったいような、それでいてずっとこうしていたいような、穏やかな雰囲気に包まれながら、時間だけがゆっくりと過ぎてゆきます。
 言葉を交わさなくても、まるでエッチをした後みたいに気持ちを通い合わせて、どちらからともなく手を繋いだ二人は、いつまでもそうしていました。

 さらさらのシーツの上に腹這いになった栞ちゃんの上から、お兄さんがゆっくりと覆い被さってきます。
 ぬちゅぅ……ぬぷっ……ぬぷぷっ……ぬぷぷぷっ……。
 おちんちんにお尻の穴を広げられる鈍い痛みも、直腸が熱くて固いもので徐々に埋め尽くされてゆく窮屈さも、近頃ではむしろないと物足りないくらいです。
 のしかかってくるお兄さんの重みも心地よく、頬っぺたを押しつけている枕にはよだれが、おもらし対策に敷いたタオルには愛液が、それぞれ小さな染みを作っていました。
「ん……んっ……んふっ……んぅうんっ……」
 きゅ……きゅっ……きゅうぅ……きゅうぅっ……。
 お尻の穴をすぼめたり、逆に息んだりすることで、おちんちんを包み込んであげている栞ちゃん、ずいぶんとテクニックに磨きがかかったようです。
 けれど、この体勢では、おちんちんが必然的に上向きになりますから、子宮が圧迫されることはないわけで、気持ちよさも半減してしまうのではないでしょうか――と思いきや。
「栞、辛かったらすぐに言うんだよ?」
 何もこれが初めてではないというのに、いつにも増して気遣うような言葉をかけるお兄さんの手には、何やらプラスチック製のケースらしきものが握られています。
 よくよく見れば、そこから伸びたコードの先は、おちんちんとお尻の穴の境目に消えているではありませんか。
「……うん、だいじょぶ……」
 心なしか弱々しい声もそのはず、おなかの奥に潜り込んでいるのは、何もおちんちんだけではないのでした。
 あらかじめ挿入されていた、細長い楕円形をした小型のローターは、おちんちんに押し込められるままに、いまやS字結腸のところにちょうど収まるようにし て留まっています。そのスイッチが入れられたときのことを思うと、どうなってしまうのか、まるで想像もつきません。
「じゃあ、スイッチ入れるよ」
 というお兄さんの声に、一度大きく深呼吸をした栞ちゃんでしたが、
 ヴ〜ン……ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……。
 次の瞬間に襲ってきた、体の奥底から揺さぶられるような衝撃に、ありったけの息を吐いてしまったのでした。
「あ――ッ!」
 しょぽ……しょぽぽぽ……。
 小刻みな振動がそのまま子宮に伝わってきて、瞬く間に絶頂に導かれてしまった栞ちゃん、早くもおもらしです。
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……。
 だからといって、ローターの動きが弱まるわけでもなく、おなかの奥から聞こえてくるくぐもったモーター音に、栞ちゃんはおかっぱ頭を盛大に振り乱して、悲鳴とも歓喜ともつかない声を上げるばかり。
「すごいよ栞、イキっぱなしなのがわかる……」
 お兄さんがお顔をしかめているのは、栞ちゃんのお尻が千切れんばかりの勢いでおちんちんを締めつけてくるからであって、動くことすらままならないようです。
 一方の栞ちゃんといえば、お兄さんの声も耳に届いていないようで、シーツをぎゅっと握り締めては、背中を思いっきり仰け反らせて、あられもない声を上げることしかできずにいます。
「いっ……ぃちゃぅ……イっちゃ……っあぅうぅうぅうぅ――ッ!」
 絶え間なく襲いかかってくる絶頂の波に翻弄されて、体じゅうがバラバラになってしまいそうな、どこかに飛んでいったまま戻ってこられなくなるような、そんな恐怖感に囚われた栞ちゃん、
「……たすけ……おに……ちゃ……たすけてぇっ……!」
 息つく間もない絶頂の合間に、ようやく助けを呼ぶことができたのでした。
「大丈夫だよ、栞。ちゃんと捕まえていてあげるから、一緒にイこうね」
 不思議とはっきりと聞こえた声と、重ねられた手の温もりに、あれほど怖かったのが、まるで嘘みたいに掻き消えてゆくのがわかりました。
 背中ごしに感じる汗ばんだ肌と、耳元に吹きかけられる荒い息遣いが、お兄さんに捕まえられていることを教えてくれます――だとすれば、怖いことなど何もありません。

「……ぁひっ!」
 体の中心から込み上げてくる、ひときわ大きな波に身を任せて、一度だけ小さな悲鳴を漏らした栞ちゃんと、
「……くぁっ!」
 痛いくらいの締めつけに、呻きにも似た声を漏らしたお兄さんは、手に手を取り合って、フィニッシュを迎えようとしていました。
 びゅーっ! ぶびゅっ! ぶぴゅっ!
「んぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ――ッ!」
 射精の瞬間にスイッチを切られたことで、敏感になっていた腸壁に打ちつけられる精液の、そのなんと熱いこと。
擦り傷に消毒薬を吹きつけるときみたいに、熱く染みる精液がもたらしたものは、けれど痛みというよりは、むしろ今までに味わったことのない感覚でした。
「ぁうっ! くぅんっ! ひんっ!」
 精液が打ちつけるたびに、小刻みに肩を震わせる栞ちゃんでしたが、もちろん、それだけで終わるはずもありません。
 ぬぷ……っ。
 乱れた呼吸を整えつつ、お兄さんがゆっくりと腰を浮かせていったことで、おちんちんも一緒になって抜けてゆきます。ぽっかりと口を開けたお尻の穴は、いくら力を込めたところで、しばらく元に戻りそうもありませんでした。
「もう出していいよ……けど、手を使わずにね」
 こちらはまだお尻の中にローターが残っていますから、アナルセックスの余韻が未だ冷め遣らないといった具合の栞ちゃん、言われるままにおなかに力を込めると、
 ぶびっ! ぶぷぷっ! ぷぢゅっ!
 湿った音を立てて、まずは白く泡立った精液が吐き出されてきました。
「お、出てきた出てきた。ほら、頑張って」
 お兄さんは楽しそうですが、栞ちゃんは一生懸命です。かなり奥まったところにまで入り込んだローターを、手を使わずにひり出すというのは、簡単なようで難しいことこの上なかったのですから。
 びゅぶっ! ぶぴっ! ぷっ!
 おならばかり出ても、恥ずかしがっている余裕なんてありません。あともうちょっとで出せるというのに、ちょっとでも気を緩めると、すぐに引っ込んでしまうのです。
「んっ……ふぅんんっ……ふっ……んんぅうっ!」
 ぷっ! ぷぢゅっ! ぶりゅ……ぷりゅっ!
 それでも、苦節すること数分、ようやく精液まみれのローターをひり出すことに成功した栞ちゃん、肩で大きく息をついていますが、それくらい重労働だったということなのでしょう、お兄さんに抱き起こされて、ようやく笑顔を浮かべたのでした。
「はい、頑張ったご褒美だよ」
 と、お兄さんが目の前にぶら下げてみせたのは、今の今までお尻の中に入っていたローターでした。
精液と腸液の入り混じった嗅ぎ慣れた匂いにつられるままに、ぱくっとそれを咥えてしまった栞ちゃん、まるで紐付きキャンディーをおしゃぶりしているみたいです。
「栞、美味しい?」
「ふぅん……ほいひぃ……」
 エッチな味の染み込んだローターに、うっとりとしたお顔の栞ちゃん、回を重ねるごとに戻れない領域にまで到達しちゃっていますが、二人にとってはこれでもノーマルなお付き合いをしているつもりなのですから、これはこれで良しとしようじゃありませんか。
 数々のヘンタイプレイに目覚めてしまった栞ちゃん、早くもこの有様では、次からいったいどうなってしまうことやら――楽しみは尽きませんが、今回はこれにて失礼をば。


つづく