おしり な しおり れべる 4
作 竹海 楼蘭
子供たちにとって、待ちに待っていた夏休みが始まりました。
遠出しては海に山に、近場ではプールに公園にと、とにかく遊び場には不自由しないとあって、照りつける陽射しも何のその、お家でじっとしてなんかいられるはずもありません。
何しろ、一日中遊んでもお釣りがくるくらいの日々が、一ヶ月以上も続くわけですから、出された宿題なんかそっちのけで、遊びに出かけたくなるのが人情というもの。
その代償が、決まって八月の末に訪れるのも、言わばお約束みたいなもので、みんなそうやって計画性というものを学んでゆくのです――学べば学ぶほど、より計画性がなくなってゆくような気がしないでもありませんが、それはまあさておき。
もっとも、この時期は子供たちばかりでなく、学生という身分にある者の大半がその恩恵に預かれるわけで、下は小学生から、上は大学生まで、暑い夏を自由に過ごせる権利を手に入れられるのです――ちぇっ、羨ましいなぁ……。
コホン、これは失礼をば。
その大多数は遊びにアルバイトに、ごく少数派は勉強にと、長いようでいて短い休暇をいかに有意義に活用できるかは、それでも各々の心がけ次第ということで……。
さて、夏休み初日にして一夜をともに過ごした栞ちゃんとお兄さんは、どんな夏休みを迎えているのでしょうか――。
水日休みのシフトはこれまで通りでも、夏休みに入ったことで講義に出る必要もなく、平日はアルバイトに出かけるのも夕方からと、つまりはそんなわけで、ほぼ毎日のようにお兄さんのお部屋に通いつめている栞ちゃん、もはや通い妻もいいところです。
涼しい午前中にお勉強を済ませて、たとえご両親のどちらかがお家にいる日でも、お友達のお家に遊びに行くと告げてお出かけすれば、これといって怪しまれることもなく、お兄さんのお部屋に直行しては、そのままお尻を可愛がられる日々が続いていました。
お部屋に着いたら着いたで、まずはお浣腸――栞ちゃんのために、ガラス製の注射器もどきやら、ゴム製のポンプ式のものやら、あれこれとマニアックな玩具
を取り揃えてくれたお兄さんのおかげで、いまや一日たりともお浣腸なしにはいられなくなってしまった栞ちゃん、それでも一番大好きなのは、おなかに直接お
しっこをしてもらうことだったりして、すっかりお兄さん色に染まっちゃっています。
そうやって、時間をかけておなかを綺麗にしてもらった後は、恒例のアナルセックス――これまでみたく、念入りに広げてもらわなくても、お尻の穴にキスされるだけで受け入れ態勢もばっちりと、身も心もずいぶんとレベルアップしてしまった栞ちゃんです。
とまあ、いかにも栞ちゃんらしいと言いましょうか、こんな風にして過ごす夏休みの、七月も終わりを告げようとしている、とある水曜日のこと――。
フィンフィンフィン……フィーン……ヴヴヴヴ……ブプ……プッ、プスンッ!
何やら不吉な音とともに、クーラーが動きを止めてしまったのは、折しも第一ラウンドが終わった直後のことでした。
お兄さんの精液でおなかもいっぱい、感じまくったアナルセックスの余韻で半ばぼーっとしている栞ちゃんの目を覚ますほど、その断末魔は尋常ならざる音で――。
「あちゃ〜っ! ……完全にイカれちゃったかぁ」
立ち上がったついでに栞ちゃんにおしゃぶりをさせつつ、壁備えつけタイプのエアコンの調子を見ていたお兄さんは、困ったような声を上げました。
海外でお仕事をすることが決まった叔父さんから、大学進学を期にお部屋を譲り受ける形となったお兄さん曰く、ずいぶんと旧式のエアコンなだけに、いつ壊
れてもおかしくはないということだったのですが、何もこんなときに壊れなくてもと、正直に思ってしまった栞ちゃんです。
「……直らないの?」
あちこちに付着したべとべとを、丹精込めて舐め取ってあげたおちんちんから、名残惜しそうにお口を離して訊ねた栞ちゃんに、お兄さんは「う〜ん」と唸っていましたが、
「電源も入んないし、たぶん部品そのものを交換しないと直んないんじゃないかな」
フィルターやらファンやらをいじくってはみたものの、たかが素人にはどうしようもならないと思い知ったようで、そろそろ汗びっしょりになりつつあるお顔で頷いたのでした。
とはいえ、汗びっしょりなのは栞ちゃんも同じで、窓を閉めきったお部屋の室温と湿度は、あそこがぐっしょりになるくらいに激しかったエッチの余熱も受けて、短時間で急速に高まりつつあります。
「「……あっつぅ〜い!」」
ベッドの上、二人して肩を並べていたのも束の間、同じタイミングで情けない声を上げてしまったのは、無理もありません。
四捨五入すれば40℃にもなる外気と、容赦なく照りつける直射日光は、窓ガラスと薄手のカーテン一枚では到底防げるはずもなく、さほど広くもない室内に充満する湿度との相乗効果でもって、二人はグロッキーに近い状況にまで追い込まれていました。
しかも、今日に限っては、もう一つの悪条件も重なっていたのですから、踏んだり蹴ったりもいいところです。
「……こんな日に限って水道工事だもんなぁ……」
壁に寄りかかったお兄さんの言う通り、水道管の劣化がどうのこうので、この辺り一帯、工事が終わるまで断水中なのです。
ということは、暑いからといってシャワーを浴びることもできないわけで、そろそろ玉の汗が滝の汗になりつつある二人は、いよいよもって窮地に追い立たされていました。
「ふにゅうぅ……」
じっとしていても暑いだけですから、手のひらを団扇代わりにして自分を扇いでいた栞ちゃんも、けれど無駄な体力を使ったところで、余計に暑くなるだけと思い知ったようです。
クーラーという文明の利器のありがたみを、ここにきて身につまされた二人でしたが、だからといって事態は何一つ好転するわけでもありません。
「……栞、銭湯行こうか?」
「せんとぉ……?」
脱ぎ捨ててあったTシャツで汗を拭ったお兄さんの提案に、鸚鵡返しに応えた栞ちゃん、どうやら銭湯というものがよくわかっていないご様子。
「町の……そうだな、おっきなお風呂屋さんだよ。電気屋さん呼んでクーラー修理してもらう間、このままってのも嫌だろ?」
銭湯というところがどういうところなのか、今一つよくわかりませんでしたが、確かに汗を流したい気分ではあります。
喉も渇いていましたし、蒸し暑さ満点の状況から解放されるのであれば、それに越したことはないと、つい快諾してしまった栞ちゃん、はてさて、今回はいったいどうなることやら――。
電話すること小一時間あまり、駆けつけた……というには、いささかおっとり刀の電気屋さんにエアコンの修理をお願いして、洗面器にお風呂道具一式を用意するやいなや、二人は我先にと蒸し風呂状態のお部屋から逃げ出しました。
とはいえ、お外もやっぱり暑いことには変わりないわけで、風こそ吹いているものの、ほとんど熱風に近く、舗装されたばかりのアスファルトの放射熱もあいまって、遠くの景色が蜃気楼みたいに揺らいで見えます。
「そこ、遠いの?」
「いや、もうちょっとだよ」
まとわりつくような熱気を帯びた空気の中を、砂漠の遊牧民みたくして歩く二人の会話も、どこか途切れがちになっていましたが、さすがにこう暑くては……ねえ?
夏休みに入って最初のデートが、よりによって銭湯というのもおかしな話ではありますけれど、エッチの後はお風呂というのが常でしたので、ここはプールで涼みたいという気分でもありません。
そういう意味では、絶好のデートスポットと言えなくもない銭湯に、最初は温泉みたいなイメージを抱いていた栞ちゃん、ところがどっこい、併設されたコイ
ンランドリーのほうがかえって目立つほど、辿り着いた先の銭湯はずいぶんと古めかしい佇まいを見せていたのでした。
「……ここ?」
高くそびえる煙突さえなければ、どこぞのボロ家に見えなくもない銭湯を前に、思わずぽかんとしてしまった栞ちゃんの手を引いて、お兄さんは苦笑混じりに『ゆ』の文字が白抜きされた藍染めののれんをくぐりました。
これまたレトロチックな、漢数字で番号が書かれた下駄箱にサンダルを二足まとめて納めて、黒字で『男』と書かれた曇りガラスの引き戸を開けると、まずはところどころが剥げかかっている大きな招き猫がお出迎え。
「いらっしゃい」
置物の招き猫がしゃべったと勘違いしそうなほど、何ともいえない声をしたおばあさんが、その脇の番台でお茶をずずーっと啜っていたりするものですから、ここだけ昭和に取り残されてしまったのではと心配にすらなります。
「じゃあ、二人ぶんで」
「はいよ。千円からだと……ちょっと待ってね、お兄さん」
高い天井やら、木製のロッカーやらを物珍しそうに眺めている栞ちゃんに洗面器を預けて、大人と子供の料金をまとめて支払ったお兄さんは、そこでまたそろばんをぱちぱち言わせはじめたおばあさんに、思わずお口をあんぐり。
まあ、受け取ったお釣りに間違いがなかったからよかったようなものの、壁掛け式の扇風機といい、いまどき針で量るタイプの体重計といい、これが演出では
ないのがかえって不思議なくらいに定番じみた銭湯の様相に、お兄さんは狐にでも化かされたような顔つきになっていました。
「すごいとこだね、お兄ちゃ――はぇ?」
滅多なことではお目にかかれない昔ながらの光景に、薄気味悪さを覚えるどころか、どこかはしゃいでいるようにも見える栞ちゃんでしたが、今まさにお風呂
場のほうに入ってゆこうとしているおじいさんを見かけて、お目々が点になってしまったのは言うまでもありません。
「ひ、ひ、人がいるよぉ……」
「銭湯だもん、そりゃあいるさ」
思わずお兄さんの後ろに隠れてしまった栞ちゃんに、何を今さらといった感じでお兄さんは応えました。
ということは、銭湯というのは温泉と同じく、不特定多数の人が出入りするお風呂ということで、つまり――。
「……えぇーっ!?」
驚きと残念が入り混じった声の意味するところはこうです。
驚きのほうは、言わずもがなですが、何も知らずに男湯のほうについてきてしまったからであって、他の人に裸を見られてしまう恥ずかしさも込められています。
残念のほうは、せっかくお風呂でエッチなことの続きをしてもらえると思ったのに、人がいてはそれも叶わないと知ったからであって、こっちのほうはお兄さんにもそれとなく伝わったようでした。
「栞、期待してたんだ」
手っ取り早く脱いだ服をロッカーに放り込みながら、小声で訊いてきたお兄さんに、もじもじとワンピースを脱いでいた栞ちゃんは、おちんちんを視界の端に捉えつつ、頬っぺたを真っ赤にしてこくんと頷き返しました。
まだ早い時間帯ということもあって、幸いなことに年配の方の姿しか見えませんから、人前で裸になることにそう抵抗はありませんでしたが、さすがにお部屋のお風呂でするときみたく、大っぴらなことはできそうもありません。
公共の場にもかかわらず、そんな風に思ってしまうのも、お兄さんと一緒のお風呂=エッチなことという図式が成り立ってしまうまでに至ったからであって、こうしてパンツを脱がされているだけで、早くもあそこがじゅんとしてしまう栞ちゃんでした。
「……大きな声出しちゃだめだよ」
いざお風呂場へという段階になって、お兄さんが言ってきたことの意味が掴めずにいた栞ちゃん、小首を傾げたところ、
「ほら、栞が大好きなの、持ってきてあげたよ」
洗面器の上に被せてあったタオルを、得意げにどけて見せたお兄さんの指が示す先には、見覚えのあるプラスチックの容器が一つ。
「……ぁ……」
一見して、どこにでもあるシャンプーの容器に見えるそれは、口のところを細工してある簡易型浣腸器とでもいいましょうか、確かにこれならカモフラージュもばっちりです。
そして、何にも増して栞ちゃんが嬉しかったのは、お兄さんも同じ気持ちだとわかったからであって、さっきまで残念がっていた気持ちはどこへやら、早くもどきどきが止まらなくなってきました。
「……でも、他の人にばれちゃうよ?」
「だったら、ばれないように平気なふりしてないとね」
期待半分、不安半分のどきどき状態が、お顔にもしっかりと書いてある栞ちゃんに向かって、お兄さんは恒例ともいえる悪戯っぽい笑みを浮かべたのでした。
男湯の中に女の子が一人ですから、最初はじろじろ見られるんじゃないかと不安がっていた栞ちゃんでしたが、先客の皆さんは特に気にも留めなかったようです。
おじさんからお年寄りまで、みんながみんな、ある程度お年を召した人たちばかりということもあって、もうお兄さんの後ろに隠れる必要もなくなった栞ちゃん、中央に穴の開いたプラスチック製の腰かけに座って、赤と青のボタンがついた水道に手を伸ばしました。
ジャーッ……。
両方の手のひらでボタンを押して、見よう見真似でお水とお湯を程よい加減に調節、擦れてしまってよくわからない薬局の宣伝が、申し訳程度に底のほうに記された洗面器にぬるま湯を張ると、まずはかけ湯です。
ざぱーっ!
「〜〜〜〜っ! 気持ちいい〜♪」
汗でべとついたお肌を洗い流してくれるぬるめのお湯に、栞ちゃんはお隣のお兄さんに向かって微笑みかけました。
「銭湯もいいもんだろ? ――ほら、背中こっちに向けて」
タオルに石鹸を擦りつけていたお兄さんに言われるままに、回れ右をして背中を向けた栞ちゃん、必然的に浴槽のほうを向く格好となったことで、慌てて両足を閉じ合わせました。
入口に近い位置を選んだということもあって、浴槽からそれなりに離れていても、真っ正面に位置する湯船のおじいさんがこっちを見ているようで、気になって仕方ありません。
こしゅ……こしゅ……こしゅ……こしゅ……。
それでも、せっかくだからと背中をお兄さんに任せて、最初は左手、続けて右手と、片方ずつタオルで擦っていた栞ちゃんでしたが、
「――ひゃ……っ!」
急に背筋をぴんと伸ばしてしまったのは、いったいどういうわけなのでしょう。
「栞、あそこもちゃんと洗わなきゃだめだよ?」
何気なく言うお兄さんの左手は、相変わらず栞ちゃんの背中を洗ってあげています。
けれど、その右手はというと、ちゃっかり腰かけの下に潜り込んでいて、中央の穴から潜望鏡のように覗かせた中指で、早くもお尻の穴を探り当てていたのでした。
つぷ……ぬぷぅ……。
からかうような口調とは裏腹に、お兄さんったら本気モードに突入したのか、やおら中指をお尻の穴に埋めてきました。
「きゃふぅっ!」
不意打ちもいいところの悪戯に、いつもみたく声を上げてしまいそうになって、はっと我に返った栞ちゃんです。
お部屋のお風呂でならともかく、声が響いてしまう銭湯で大きな声を上げたりしたら、注目の的もいいところです。女の子というだけで、ただでさえ人目を引いてしまいそうなのに、よりによってそんな失態をさらすわけにはいきません。
「……いじわるぅ……」
振り返って抗議したところで、お兄さんはどこ吹く風とばかりに、さらに中指を奥のほうへと押し込んできました。
「だめぇ……おしりぃ……ぃいぃ……」
にゅる……にゅぷ……ぬちゅ……にちゅ……。
軽く出し入れさせたり、直腸内でぐにぐにさせたりと、栞ちゃんの弱点を狙って動き回る指に、これ以上好き勝手させないためには、お兄さんの言うことを聞くしかないと思い知ったようで、
「……ふぁ……ちゃ、ちゃんと……あそこも洗うからぁ」
閉じ合わせていた両足をそろそろと開くと、栞ちゃんは割れ目に沿っておずおずと指を這わせはじめました。
「そうそう。やればできるじゃないか――おまんこ、きちんと洗うんだよ?」
えらいえらい、なんて言われても、ちっとも嬉しくありません。小声でいやらしいことを囁いてくるお兄さんってば、やっぱり意地悪です。
けれど、意地悪をするお兄さんだからこそ、栞ちゃんの大好きなお兄さんなのであって、恥ずかしくてたまらないのに、意地悪されるのはちっとも嫌じゃありませんでした。
(やだ……あのおじいさん……こっち見てるよぉ……)
たまたまなのかどうなのか、湯船に浸かっているおじいさんのお顔がこっちを向いていることもあって、恥ずかしさもここに極まれりといった風の栞ちゃん、それなのに指は勝手に割れ目を開いて、その奥に隠された中身までもさらそうとしています。
くちゅ……。
知らない人に見られているかもしれないというのに、じゅんとなったあそこからは愛液が滲み出してきて――いえ、見られているせいで、だったのかもしれません。
(こんなの……こんなのヘンだよぉ……)
くちゅっ……ちゅくっ……ちゅぷっ……ぷちゅっ……。
見る人によっては、オナニーをしているともとれるほど、念入りにあそこを洗っている栞ちゃん、お兄さん以外の人前で初めて素肌をさらしたというのも手伝って、興奮状態はいつもの比ではありませんでした。
(ヘンなのにぃ……指、止まんないよぉ……。あそこ――栞のおまんこぉ……くちゅくちゅって、おつゆいっぱい出てるぅ……)
お兄さんが言うところのあそこ――“おまんこ”という響きは、何故だかとってもいやらしくて、頭の中で反芻するたび、指はさらに気持ちよさを求めてしまいます。
ややもすれば、このまま達してしまいそうになって、お尻からおなかにかけての違和感にすら気づかなかった栞ちゃんでしたが、
「――よぉっこら……しょっとぉ!」
ちょうどそのとき、二人とは背中合わせの位置に、新しく入ってきたおじさんが、威勢のいい掛け声に合わせて腰を下ろしたことで、びくっと固まってしまったのは言うまでもありません。
よもや見られてはいないでしょうが、人が入ってくるのにも気づかないほど夢中になっていた自分に、いよいよもってお顔も真っ赤っかの栞ちゃん、再び鏡のほうに向き直ったことで目にした頬っぺたの赤みを落ち着かせるべく、シャワーのコックを捻りました。
シャアァアァアァアァアァアァアァアァ……。
熱いシャワーでも、むしろ火照った体にはちょうどいいくらいです。ちらっと横目で見たお兄さんは、そんな栞ちゃんの慌てっぷりに声を殺して笑っていましたから、そりゃ頬っぺただって膨れるというもの。
「ははっ、ごめんごめん」
同じようにシャワーを浴びながら、ご機嫌を損ねてしまったことを謝ってきたお兄さんに、つんとおすまし顔を保っていた栞ちゃんでしたが――。
ぐりゅうっ……ぎゅるぎゅるぎゅるぅ〜……。
急におなかが張ってきたと思う間もなく、お馴染みの感覚がやってきたものですから、さあ大変!
おそらくは、指と入れ違いで、いつの間にかお浣腸されていたのでしょう。そんなことにさえ気づかなかったほど、エッチな気分が高まっていたのだと思い知って――って、この場合、そんな悠長なことを考えている余裕なんてありません。
「……お、おにいちゃぁん……」
ごく薄めの石鹸水か何か、お湯だけではこうはならないおなかの刺激に耐えつつ、縋るような視線を向けたところ、お返事の代わりに、お兄さんは栞ちゃんの座っているところのコックをいっぱいに捻ったのでした。
その意味するところは、端的に言うと「ここでしなさい」ということでしたが、すぐ真後ろに人がいるのに、よりによっておもらしなんか――。
「……ふぁ……っ……」
できっこないって、頭ではそう思っていました。
なのに、お尻の穴はぜんぜん言うことを聞いてくれなくて、勢いを増したお湯に打たれていても、ぞくぞくした感覚が止められなかった栞ちゃん、
ぶびゅっ! びゅぢゅうぅうぅ――ッ!
中央の穴から、ついに浣腸液を漏らしてしまったことで、理性の糸がぷつんと切れてしまったに違いありません。
ぶぢゅっ! ぶぢゅぢゅぢゅっ! ぶぢゅぶぢゅぶぢゅっ……。
お尻の穴からあぶくとなって溢れ出る浣腸液の音は、シャワーの水音に紛れて周りには聞こえずに済んだようですが、栞ちゃんの耳にだけははっきりと届いていました。
しかも、目の前の溝に向かって、うっすらと濁った色のあぶくがゆっくりと流れてゆくとあっては、そうしたい衝動を堪えられるはずもなく――。
「……ぁは……っ……」
ちょろっ……ちょろちょろちょろちょろ……しょわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ……。
たくさんとはいかないまでも、人に見られているかもしれないという状況下でおしっこまでしてしまった鏡の中の自分は、ものすごく可愛く見えたのですから不思議でした。
「お兄ちゃんと一緒に来たのかい?」
「はい。銭湯は初めてですけど」
「広いお風呂もいいもんだろう?」
「はい。とっても気持ちいいです」
「ほほう、おりこうさんだねぇ」
「えへへ……ありがとうございます」
こういうのも裸のお付き合いと言っていいものやら、年配の方々に囲まれて、浴槽の縁に腰かけていた栞ちゃんは、きちんと受け答えしてみせました。
仮にも日舞のお家元の生まれですから、幼稚園の頃から敬語でお話するのには慣れています。年配の方々には、そんな丁寧な言葉遣いが受けたのでしょう、まるで孫娘にでも接するかのように話しかけてくれたのでした。
「お湯が熱いんなら、薄めていいからね」
「はぁい」
お湯が熱すぎることもあって、遠慮なく水で薄めつつ、片足を浸けたり引っ込めたりしている栞ちゃんは、いつの間にか銭湯特有の雰囲気にすっかり打ち解けていました。
もっとも、皆さんの目には、そんな仕草ですら自然に映ったことでしょうが、大勢の人の前で裸になって、さり気なくあそこを見せつけている栞ちゃんのどきどきといったら、さっきから最高潮に達したままです。
(おじいさんたちの見てる前で……お浣腸されて……おもらししちゃったぁ……)
ついさっきのことを思うと、それだけでおなかの奥がきゅんとなってしまう栞ちゃん、頭にタオルを乗っけて湯船に浸かっているお兄さんのほうに目を向けると、見つめ返してきたその視線は、そのままでいるようにと言っているようでした。
(あのおじさん……さっきから、栞のあそこ見てるよぉ……)
対面にいるおじさんの視線をあそこらへんに感じつつ、それでも昂ぶった気持ちは見られることの快感を幼い体に刻み込んで、栞ちゃんをがんじがらめにしていました。
そんなこんなで、先客のおじいさんたちが「お先に」と上がってゆくまで、たっぷりと起伏に乏しいヌードをお披露目することになったわけですが、もちろん、それだけで終わるはずもありません。
「栞、おいで――」
お兄さんに手招きされて入っていったのは、底一面から気泡が噴射されているお隣の泡風呂で、これくらいの熱さなら栞ちゃんにもちょうどいいくらいでした。
「――お兄ちゃん……」
ちょっぴり深いこともあって、お兄さんに抱っこしてもらった栞ちゃん、お尻の穴に触れてきたおちんちんに、さっきからのどきどきも手伝って、こくんと頷き返しました。
ぬむぅ……っ!
視界の至るところに利用客の姿があるというのに、待ち焦がれていたおちんちんにおなかをいっぱいにされて、途端にくてっとなってしまった栞ちゃんです。
「こんなに人がいるのに、アナルセックスしてるんだよ、わかる……?」
ことさら現状を知らしめるかのように、意地悪に告げてきたお兄さんに、お尻をきゅっと締めつけることで応えた栞ちゃん、泡に阻まれて見えないのをいいことに、自分のほうから腰を上下させはじめました。
ぬむっ……ぬむっ……ぬむっ……ぬむっ……ぬむっ……ぬむっ……。
お風呂の中でのエッチですから、いささか勝手は違うものの、人前でアナルセックスをしているという状況が、二人の興奮をよりいっそう高めてくれます。
「……ふぁ……おにぃ……ちゃ……はぁん……」
声を押し殺して、ごくわずかな動きでも快感を得られるようにと、おなかにきゅうっと力を込めた栞ちゃんのおっぱいを、お兄さんはきゅっと指で抓んで、人目を盗んではうなじに舌を這わせてきました。
「栞、すごく気持ちいいよ……」
「ぅんっ……しおりもぉ……」
今なら、たとえ繋がっているところを見られたとしても、恥ずかしさよりも興奮のほうを強く覚えたことでしょう、泡が湧き立つお風呂を静かに波打たせながら、二人はさっきのおじさんがこちらのほうに向かってくる中で、ついに絶頂を迎えたのでした。
びゅーっ! びゅるるっ! びゅるっ! びゅっ!
「……っは……ぁうぅ……ぅん……んっ……ふぁ……」
体を取り巻くお湯よりも熱く感じる脈動と迸りを、おなかの奥にたっぷりと感じて、泡風呂に入ってきたおじさんの視線を真っ向から受け止めながら、さらなる高みへと連れ去られてしまった栞ちゃん、
「……お嬢ちゃん、のぼせちゃったのかい?」
蕩けきって真っ赤っかもいいところのお顔をしていたせいで、おじさんがそんな風に気を回してくれたのも無理もなく、
「……ふぁいぃ……」
ややあって半開きの唇からこぼれてきたその声は、誰もがどきっとするほど色っぽかったのでした。
ぴとっ――。
「ひゃんっ!」
お風呂上がり、いまだ余熱が冷め遣らないといったお顔で、スノコを加工した長椅子に腰かけていた栞ちゃん、背中に冷たいものを押し当てられて、ぴょこんと飛び上がりました。
「はい、栞はこっち」
その様子に笑いながらも、お兄さんが差し出してきたのは、汗をかいたイチゴ牛乳の瓶で、喉の渇きも頂点に達していた栞ちゃん、きちんとお礼を述べてから蓋を開けました――親しき仲にも礼儀あり、というやつです。
「「んくっんくっんくっ……」」
お兄さんのほうは、銭湯といえば定番のコーヒー牛乳で、二人してぐびぐびと喉を鳴らしながら飲む牛乳の、その美味しすぎることといったら――お行儀の悪さは、この際、目をつぶっていてもらうことにしましょう。
「「……ぷはぁっ♪」」
一気に中身を空けた牛乳瓶を脇に置いて、お隣に腰を下ろしたお兄さんにもたれかかった栞ちゃん、おなかだけでなく、お尻のほうもお兄さんのミルクでいっぱいとあって、まだ頬っぺたのあたりが上気したままです。
そんなですから、首を振る扇風機から吹きつけてくる風も心地よく、お兄さんと二人、裸でこうしていても、誰からも変な目で見られる心配もないとあって、栞ちゃんはすっかり銭湯がお気に入りになりました。
「また来ようか」
「うん♪」
格好のデートスポット――いえ、プレイスポットと言うべきなのでしょうか――を発見した二人の夏は、まだまだこれからといった感じです。
七月はもうすぐ終わりますが、一ヶ月まるまるお休みの八月がもうすぐそこまで来ているとあって、栞ちゃんもお兄さんも思うところは同じなのでしょう。お
風呂よりもお外よりもアツアツな二人の夏が、どんなに熱いものになるのか、今から楽しみではありますけれど――。
この続きは、また今度ということで。
つづく