おしり な しおり れべる 6

作  竹海 楼蘭

 日中の暑さを忍ばせる夜風に乗って、神社のほうから笛や太鼓の調べが聞こえてきます。
 いつもは参拝客の姿をちらほら見かける程度で何もない境内も、今夜に限っては出店と祭り提灯の明かりが立ち並び、日頃の静けさが嘘のような賑わいに満ちていました。
 本殿の前にそびえる櫓を取り囲むようにして、お囃子に合わせてめいめいの振り付けで楽しんでいる盆踊りの輪。
 物珍しそうに出店を片っ端から覗いて回っては、どっちが楽しんでいるのかわからないくらいはしゃいでいる親子連れ。
 木陰でいちゃいちゃしながら、花火の始まりを寄り添い合って待っている恋人たち。
 神社がこんなにも賑わうのは、年に二回、元日の初詣とお祭りの日くらいのもの――って、それにしてもものすごい人の入りようです。
 そんな一年に一度の夏祭りの夜ですから、ここは一つ夕涼みと洒落込みたいところですが、こうも人が多くては涼むなんて夢のまた夢。人込みが苦手な栞ちゃんなら、なおさらのことでしょう。
「……はぅ……」
 お兄さんと連れ立ってお祭り見物にきたまではよかったものの、文字通りのお祭り騒ぎが醸し出す独特の雰囲気に、栞ちゃんは少しばかり酔ってしまったようでした。
「栞、大丈夫?」
 Tシャツの前をぱたぱたさせて風を送りながら、傍らで具合を悪そうにしている甚平姿の栞ちゃんに、お兄さんはちょっぴり心配顔。
「うん……平気――」
 人込みが苦手な上に、息が詰まりそうな人いきれも手伝って、ちっとも平気そうには見えない栞ちゃん、せっかくのデートなのに心配をかけるわけにはいかないと、無理に笑ってみせました。
「――って言うほど平気じゃないね。こっちにおいで」
 そこはやはり付き合いの長いお兄さんのこと、はぐれないように繋いだ手が心なしか震えていることに気づいて、出店と出店の間を縫うようにして人込みから離れました。
 そのまま生い茂った藪と藪の合間を掻き分け押し分け、ちっちゃな体を抱きかかえて境内の裏手へと。
「ほら、ここなら誰もこないから――」
 本殿の陰に当たる雑木林の中、わずかばかりの空き地を見つけて栞ちゃんを下ろすと、よほど気分が悪かったらしく、足元がふらついています。
「――おっと!」
 急に倒れ込んできた栞ちゃんの軽くて柔らかな体を受け止めて、貧血でも起こしたのかとお顔を覗き込もうとしたお兄さんの耳に、ややあってすすり泣く声が聞こえてきました。
 どうやら迷惑をかけたことを気に病んでいるようですが、年齢不相応の遠慮深さにお兄さんはやれやれといった表情で地面に腰を下ろすと、
「……人込みに酔っちゃったんだから、しょうがないよ」
 ひっくひっくとしゃくり上げる栞ちゃんを胸に抱き寄せて、おかっぱ頭を撫で撫で。
 いやはや、端から雲行きが怪しくなってきたデートですが、これしきのことで栞ちゃんの心に傷を残すわけにはいきません。
 見かけに寄らず強情なところのある栞ちゃんのことですから、もうお出かけしないなんて言い出す前に、ここは一つ、強引にでもお口を塞いでしまう必要があります。
「……やっ!」
 泣き顔を見られまいとするあまり、栞ちゃんはお顔を背けさせましたが、気にしていないことをはっきりさせるためにも、半ば強引に唇を重ねていったお兄さ ん、いくら雑木林の中とはいえ、いつ誰が来てもおかしくない状況でキスできるなんて、栞ちゃんのことを本当に大切に想っているからこそ。
「……ん……ふぁん……」
 ちょっぴり涙の味のする唇をついばんでやると、ようやく観念したのか、栞ちゃんのほうからおずおずと舌が差し出されてきました。
 れりゅ……ぬちゅ……ぴちゅ……んきゅ……。
 その舌といわずお口の中といわず舐め回して、たっぷりよだれを送り込んでやると、栞ちゃんの喉がこくこくと可愛らしい音を立てます。
 今に始まったことではありませんが、二人にとってのキスはエッチのスタートを意味しているようなものでしたから、今すぐこの場所でエッチに雪崩れ込んでも何ら不思議ではなく――。
 ――ひゅるるるる……ぱぁあぁんっ!
 折しも、二人の頭上で花火が瞬いたことで、エッチな気分は一時おあずけです。
 人込みから離れたところで、誰にも邪魔されることなく花火を観賞できるのも、今にして思えば栞ちゃんの具合が悪くなったおかげであって、人間万事塞翁が馬といったところでしょうか。
「わぁ……綺麗――」
 一時はどうなることかと思いましたが、次々と打ち上げられては夜空を彩る色とりどりの花火に、ようやくデートらしい雰囲気を味わうことのできた栞ちゃん、大好きなお兄さんの胸に体を寄せて、ずいぶんと幸せそう。
 それに、ご両親が揃って外出している今夜、久しぶりにお泊まりできることも、幸せな気分に一役買っているのかもしれません。お手伝いさんには早めに帰る と伝えてありますが、そのお手伝いさんだって早めにお仕事を切り上げて帰ってしまっているでしょうから、誰にも気兼ねすることなく一晩中可愛がってもらえ るというものです。
 夏休みに入ってからというもの、ほぼ毎日に渡って可愛がられてきたお尻の穴と、ついこの間、お兄さんに大切な初めてを捧げたあそこは、そんな栞ちゃんの期待を一身に受けて、甚平の内側で早くもじゅんと潤っていたのでした。


 花火と盆踊りが終わると同時に人の波も引きはじめて、出店が我先にと店じまいしてゆく中、栞ちゃんはお兄さんと手を繋いで、今となっては逆に寂しささえ感じられる境内の石畳の上を歩いていました。
「甚平にしてよかっただろ?」
「んっ♪」
 栞ちゃんが美味しそうに咥えているリンゴアメは、店じまいをしていたおじさんが粋な甚平姿に感心してタダでくれたもので、最初は浴衣を着たがっていた栞ちゃんも、今ではすっかり甚平がお気に召したようです。
 その甚平ですが、股間のところをボタンで留めているおかげでベビー服を連想させる上に、リンゴアメをおしゃぶりみたいに咥えているものですから、まるっ きり赤ちゃんを思わせる栞ちゃんに、お兄さんは笑いを堪えるのに必死でした――それにはもう一つ理由があるのですが、今はまだ伏せておくことにしましょ う。
 ともあれ、そうしている間にも撤収作業は滞りなく進み、提灯の明かりを残してがらんとしてしまった境内には、いつしか虫の声が重なりはじめていました。
「お祭り、終わっちゃったね」
 呟くようなお兄さんの声に、栞ちゃんも無言で頷き返しました。
 わずか一時間たらずのうちに、お祭りの賑わいを感じさせるものはあらかた撤去され、やがて唯一その名残を留めていた提灯も消されると、いつもの静けさが訪れた境内は、けれどいつも以上の寂しさに包まれているようで――。
「お兄ちゃんっ……!」
 ふいにお兄さんがどこかへ行ってしまいそうな気がして、ぎゅっと抱きついていった栞ちゃん、お兄さんと二人、今は満ち足りていても、いずれこんな風に終わってしまうときがやってくるのではと、幼心にも不安を覚えてしまったに違いありません。
「大丈夫――栞のこと、絶対に離したりしないよ」
 すがりついてくる栞ちゃんの気持ちを察して、ぽんぽんと優しく背中を叩いてやりながら、お兄さんは続けました。
「お尻の初めても、おまんこの初めてももらっちゃったし。――栞にだって、お嫁さんになってもらうって約束を守ってもらわないとね」
 暗闇に差し込める月明かりのように、お兄さんの言葉には栞ちゃんを安心させる響きがありました。
「それに、いつまで経ってもおもらしが治らない栞の面倒を見なきゃなんないし」
 最後の最後で台無しですが、ぷうっと頬っぺたを膨らませたところを見るに、ついさっきまでの不安はどこへやら、いつもの栞ちゃんに戻れたようです。
 そう――いつもの栞ちゃんらしさを取り戻したいま、目を細めて見下ろしてくるお兄さんの期待に、いつもの栞ちゃんとしては背くわけにはいきません。
「……だって……栞、しおりぃ……」
 瞳をうるうるさせながら、二、三度、ぶるるっと身震いした栞ちゃん、誰もいなくなってしまった境内の中で、お尻をもじもじさせはじめました。
 ……しょわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ……。
 静かすぎるおかげで、その音はお兄さんの耳にもちゃんと届きました。が、これだけ盛大なおもらしをしても甚平が濡れないのは、いったいどうしたことでしょう。
「やっぱりオムツしてきて正解だったね」
 お兄さんの言う通り、ベビー服を連想させる甚平の下、栞ちゃんが穿いていたのはパンツなんかではありませんでした。
 お出かけの前、あれこれと言いくるめられるままに穿かされた、ある意味、今の格好に最もお似合いのオムツ――よもや本当に役に立ってもらうときがくるなんて、栞ちゃんはおろか、神社に祀られている神様だって夢にも思わなかったに違いありません。
「……ぉも……らしぃ……しちゃったぁ……」
 語尾が震えて言葉になっていませんが、吸水性抜群のオムツはおしっこを一滴も漏らすことなく、かといってあそこをびちょびちょに濡らすほどでもありませんでしたから、甚平に引き続いて、オムツまでお気に入りになってしまいそうな栞ちゃんでした。
「オムツの履き心地はどう?」
 甚平の股間に手を当てて、少しも湿っていないことを確認してきたお兄さんの問いかけに、
「うん……気持ちいい……かも」
 正直に答えてしまうあたりが、いかにも栞ちゃんといいましょうか、これでまた一ついけない方面へと足を踏み入れてしまった栞ちゃんでした。

 昔々、今の本殿が建立されるきっかけとなった空襲があった時代よりもずっと昔、参道は公園のほうに向かって伸びていたらしく、舗装もされていなければ獣道も同然の山道を、栞ちゃんはお兄さんに手を引かれて、おっかなびっくり歩いていました。
 当然ですが明かりと呼べるものもなく、足場も悪ければ今にもお化けが出そうな雰囲気に、つい尻込みしたくなる気持ちもわかります。もっとも、どこまでも暗がりの続く夜道より、今の格好のほうが、栞ちゃんにとってはよほど心許なかったに違いありません。
 それというのも、オムツを外してもらったついでに、誰もこないからとか暗くてわかりっこないからとか何とか、とにかくまたもや言いくるめられて、甚平ま でも取り上げられてしまったからなのですが――そうすると当然のことながら、今の栞ちゃんは履物の草履を除いてすっぽんぽんということになります。
 いくら人通りのない山道とはいえ、裸のままでいるのはさすがに抵抗があるようで、お兄さんの後ろに隠れるようにして、後ろを振り返り振り返りここまでつ いてきた栞ちゃん、胸のドキドキが怖さからくるものなのか、あるいは恥ずかしさからくるものなのか、自分でもよくわかっていませんでした。
「一本道のはずなんだけど……おかしいな、本当にこっちでよかったかな?」
 怖がらせるつもりで言ったわけではないにせよ、お兄さんの何気ない呟きは、栞ちゃんの不安をことさらに煽り立てるのに充分すぎました。
 最初は肝試しだなんて笑っていたお兄さんも、やはり怖いものは怖いらしく、繋いだ手の平がじっとりと汗ばんでいるものですから、心底怖くなってしまった栞ちゃんです。
「も……戻ろうよぉ……」
 半分泣き声に近い栞ちゃんの呼びかけに、そうしたほうが賢明かもしれないと、お兄さんもまた思いはじめていた矢先のこと――。
「……ぁあぁ……」
 繁みの向こう側から聞こえてきた、すすり泣きに近い甲高い声に、二人はぎょっとしてお顔を見合わせました。
 その声が聞こえてきたほうには桜の木があるだけで、誰かがいるようには見えません。思わずぞっとした二人に、さらに追い討ちをかけるようにして、
「……んぅうぅ……」
 またもや同じような呻き声が聞こえてきたものですから、びっくり仰天、肝を潰したもいいところ。
 空耳で片付けるにしては、二人して同じ声を聞いていましたし、状況が状況だけに考えたくはありませんでしたが、これは紛れもなく――。
「……ひッ……!」
 今にも泡を吹いて卒倒してしまいそうな栞ちゃんを、{@見捨てて逃げ出すA抱きかかえて逃げ出す}という選択肢のうち、辛うじてAを選ぶことのできたお 兄さん、足場の悪さをものともしない猛ダッシュで真っ暗な道をひた走りに走ると、木々の合間に公園が見えるところまできてついに力尽きてしまいました。
「はぁッ……はぁっ……はッ……はっ……はぁ……はぁ〜……」
 こんなに怖い思いをしたのは、おそらくこれが初めてなのでしょう、地べたにへたり込んで息を荒げるお兄さんの前で、どうやら腰が抜けてしまったらしく、 ぺたんと尻餅をついてしまっている栞ちゃん、涙目になっているのは何も恐怖体験からくるものばかりではなさそうです。

「……栞?」
 と声をかけたお兄さんも、ようやく栞ちゃんに起こった異変の正体に気づいたようで、次いで伸ばされた手は、ぽっちゃりとしたおなかの上を擦っていました。
「ふぇ……栞、しおりぃ……」
 びっくりしたおかげでお尻の力が緩んでしまったのでしょう、今にも泣き出しそうな栞ちゃんにキスをすると、それだけで安心できたのか、勢いを増してきた破裂音に次いで独特の匂いが立ち昇ってきました。
 ……ぶぴゅ……ぶぷっ……。
 こういうのも怪我の功名と言っていいものやら、ごくごく自然な形(?)でおもらししてしまった栞ちゃんの――栞ちゃんだからこその――可憐な姿に、お兄さんはすっかりしてやられたみたいです。
 手の平ごしにもわかるおなかの動きと、気恥ずかしそうに見つめてくる上目遣いの視線に誘われるまま、指先を半開きの口元に持ってくると、
 ちゅっ……ちゅうぅ……。
 勝手知ったるかのようにおしゃぶりをはじめた栞ちゃんの舌の感触が、指先から指全体にかけてまとわりついてきて、理性の二文字がどこかに飛んでいってしまったのでした。
「栞、気持ちいい?」
 指先で舌の上をくすぐるってやると、「くぅん」と子犬みたいに鼻を鳴らして栞ちゃんは頷き返してきました。
 公園近くですっぽんぽん、しかもおもらし続行中という、誰かに見られたら言い訳できない格好にも関わらず、今の栞ちゃんにはお兄さんしか見えていないようです。
 そして、こうなった栞ちゃんがどれだけ聞き分けの良い子になるのかを、実に身をもって知っているお兄さんでしたから、
「じゃあ、栞のお尻が今どうなってるのか、ちゃんと言ってごらん? 言えたらおしゃぶりしていいからね」
 立ち上がるついでに指と入れ違いにおちんちんを突きつけると、今度ばかりは言いくるめる必要もなさそうで、栞ちゃんは恥ずかしそうに口を開きました。
「……あのね……うんちと……お出かけの前にお兄ちゃんが出してくれたのが、びっくりしたからぁ……たくさん出てきて止まんないのぉ」
 言い終わるやいなや、大きなお口をあけておちんちんにむしゃぶりついてきた栞ちゃんってば、図らずも出してしまった精液を、今度はお口のほうから取り込もうとしているかのようです。
 ちゅばっ……ちゅっ……ずぢゅうぅ……ぢゅぽ……ぢゅぽっ……ぢゅぼっ……。
 野外ですっぽんぽんになっていることに加え、一番恥ずかしい姿を見守られているという二重の興奮から、いつになく激しい舌遣いで栞ちゃんのおしゃぶりは続きます。
「栞、だいぶ上手になったね」
 お兄さんに褒められるのが何より嬉しい栞ちゃんのこと、おしゃぶりとおもらしにも必然的に熱がこもって、これで首輪があったりしたら本当に子犬そのまんまなのですが――。
「――待って、誰かくる……!」
 今しがたやってきた道のほうから、駆け足に近い足音が近づいてくることに気づいて、お兄さんは再び栞ちゃんを小脇に抱きかかえて颯爽と木陰に身を隠しました。
 ……たったったったっ……だっだっだっだっ……ざっざっざっざっ……。
 あと数秒遅かったらどうなっていたことやら、ちっちゃな女の子をおんぶしている高校生くらいの男の子が、脇目も振らずに二人のいた場所を駆け抜けてゆきます。
「あ〜びっくりした。……どうしたの?」
 ほんの数秒の出来事でも、心臓に悪いアクシデントに見舞われたお兄さん、萎えかけたおちんちんを目の前にして、足音が遠ざかってゆく方向に気をとられている栞ちゃんに訊ねました。
「あ……ううん、なんでもないの」
 男の人は誰だかわからなくても、その背におぶさっていた浴衣姿の女の子が、クラスメイトにして一番のお友達のお顔をしていたことから、ついつい物思いに耽ってしまった栞ちゃん、歯切れの悪い言葉の陰には、色々と思うところもあるようです。
「ひょっとして、さっきのって今の子たちだったのかもね」
「え……? う、うん……そう……なのかも」
 確かに、言われてみればあの声は一番のお友達こと、真紀ちゃんにそっくりでした。
 その真紀ちゃんが、こんな夜中に、あんな辺鄙なところでヘンな声を出していたということは、ひょっとしてひょっとすると、今の自分たちみたいなことをしていたのかもしれません。
 いつもは元気いっぱいで向日葵みたいな笑顔を覗かせる真紀ちゃんが、もしかしたら自分と同じことをしているのかも――そう思うと、不思議と嬉しさが込み上げてきた栞ちゃんです。
「さっきからぼーっとしたり嬉しそうにしたり……栞、ちょっと変だよ?」
「うん。栞、ヘンでいいの♪」
 開き直ってお兄さんに抱きついていった栞ちゃん、思わぬ夜の巡り合わせがもたらしたものは、これから先、違う形でお友達との仲を進展させてゆくことで しょうけれど、それはまた別のお話ということで、今宵はこれにてお開きをば――って、今回のお話は栞ちゃんが主人公ですから、そうも言っていられませんよ ね。
 それでは、もうしばらくお付き合いの程を――。

 大好きな人の見ている前でおもらしをしてみせるのは、きっとヘンなことなのでしょう。

 大好きな人のおしっこを飲んだり、うんちの一部始終を見守ってもらったりするのは、もっとヘンなことなのでしょう。

 お尻の穴でエッチをしたり、おなかにおしっこをしてもらったりするのは、もっともっとヘンなことなのでしょう。

 おなかがごろごろするのを我慢しながら、あそこでエッチをするなんて、もっともっともっと――ずっとヘンなことに違いありません。

 でも、ヘンだとわかっていることが、とても気持ちのいいことだったりしたら、いったいどうしたらいいのでしょうか――。

 大好きな人はちゃんとわかってくれています。
 けれど、それだけじゃ不安なのもまた、純な乙女心というもの。
 だからこそ、真紀ちゃんの熱に浮かされたような表情を見たとき、栞ちゃんの中で何かがすとんと落ち着いたのでした。
 真紀ちゃんがこんなヘンなことをしているのかはわかりません。
 わかりませんけれど、こんなヘンなことで気持ちよくなってしまう自分のことを、真紀ちゃんならきっとわかってくれるだろうと、あそこから込み上げてくる快感と、お尻の穴に押し寄せてくる快感の狭間で、栞ちゃんはそんな予感めいたものを覚えていました。

「んぅ……っうん……!」
 ちょっとでも気を抜くと、おなかに注がれたおしっこが漏れそうになります。
 そんなですから、きゅっとお尻に力を込めると、今度はあそこに入っているおちんちんが存在感を否応なく発揮してきて、栞ちゃんは呻き声を上げると同時に眉根を寄せました。
 つい先日、ロストバージンしたばかりのあそこは、お尻と違ってまだおちんちんに馴染んでいませんが、初めてが初めてだっただけに、お浣腸されながらの セックスに異様な興奮を覚えるようになった栞ちゃん、お兄さんの首に両腕を回して、拙くも腰を上下させはじめました。
「おまんこにも慣れてきたみたいだね」
 耳元で囁きかけるお兄さんに応えるつもりで腰を落としてゆくと、おちんちんの先っぽが一番深いところを突き上げてくるのがわかります。
 わずかな痛みと、痛みの中にある甘美な感覚、それにおなかからお尻の穴にかけての緊張感も手伝って、栞ちゃんはさらに腰の上下運動をより激しいものにさせてゆきました。
 ぢゅぷっ……ぢゅぷっ……ぢゅぷっ……ぢゅぷっ……ぢゅぷっ……ぢゅぷっ……。
「あっ……あんっ……あぅんっ……ぅあぁんっ……!」
 お尻から間接的に子宮を刺激されるのとは違う、直接的な刺激が背筋を駆け上がってくる中で、ひくひくと蠢くお尻の穴からは、断続的におしっこが漏れ出しています。
 ぷしゅっ……ぴしゅっ……ぴゅぢゅっ! ぷぢゅうぅうぅうぅーっ!
「おしっこぉ……お尻からおしっこ、出ちゃう……出ちゃうぅっ!」
 ぶぢゅっ! ぷぢゅしゅうぅうぅうぅうぅうぅうぅ――ッ!
 草むらに勢いよく叩きつける、あそこからではなくお尻からの、自分のものではなくお兄さんのおしっこが迸る感覚に、ぴんと背筋を仰け反らせて全身をわな なかせている栞ちゃん、そのたびに膣口がきゅっきゅっと締めつけてくるものですから、お兄さんとしてもたまったものではありません。
「栞、もっときゅーってしてごらん」
「ぅんっ! うぅんんんんっ!」
 太腿を閉じ合わせることができないぶん、あそこに意識を集中させて言いつけ通りにきゅーっとさせると、出損なったおしっこがおなかの中でぎゅるぎゅると音を立てさせます。
 おちんちんの入っているあそこと、おしっこを出したがっているお尻の二律背反した感覚が合わさって、どっちつかずになった衝動の中、全身の神経が麻痺してしまいそうな、心まで弾け飛んでしまいそうな爆発がおなかの奥のほうで沸き起こりました。
「んぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ――ッ!」
「くッ……栞……ッ!」
 びゅるっ! びゅっ! びゅるるっ!
 爆発を鎮火するかのように打ちつけてくる精液も、こんなにも熱いとあっては火に油を注ぐようなもの。
「あっ! あッ! あっ! あッ!」
 胎内で跳ね回るおちんちんの脈動に合わせて、無意識のうちにきゅっきゅっとあそこを締めつけさせる栞ちゃんの視界は、夜の夜中にあって真昼のように鮮烈な白に染め上げられました。
 そうやって黒から白、白から赤、赤から黒へと――快感の度合いを表す色彩が、頭の奥と胎内で同時に弾けて、くてっとお兄さんの胸に倒れ込んでいった栞ちゃんのお尻から、まるでおもらしでもしているかのように、残っていたおしっこが染み出してゆきます。
 ……ちょぴちょぴちょぴちょぴ……。
「……ぁうっ……く……ぅうんっ!」
 ぐりゅ……ぎゅるるるるぅ〜……。
 おしっこが出終わったら、刺激を受けたおなかが次なるものの解放を望んで、ぎゅるぎゅるごろごろという音でもって、その中にあるものの存在感をアピールしてきました。
「帰る前に、お尻の中も綺麗にしていこうね」
 膣内に収まったままのおちんちんに伝わってくる下腹部の蠕動に、栞ちゃんのおとがいを上げさせたお兄さんは、ごほうびとばかりにちゅっとキスして――。
 それが合図だったかのように、お尻の穴に込められていた力がふっと抜けてゆきます。
 ちっちゃな子宮を精液でいっぱいにされ、今またキスをされつつ、今夜一回目となる絶頂の余韻も冷めやらないまま、お兄さんの手でお尻を左右に広げられた栞ちゃん、
「……っ……ぁはぁあぁあぁあぁ〜ッ!」
 感極まった声を上げると同時に、おなかの中に残っていたものを、すべからく出し尽くしてしまったのでした。

「ま、真紀ちゃん、あの、あのね……」
 二学期の始業式、ラジオ体操とプールの皆勤賞たる賞状を誇らしげに机の上に並べている真紀ちゃんに、栞ちゃんは思い切って声をかけました。
「……お祭りのとき、裏道で……その……」
 きょとんとしたお顔で目を向けてくる真紀ちゃんと視線を合わせられず、もごもごと口ごもってしまった栞ちゃんに、記憶を反芻していたらしい真紀ちゃんもまた、慌てて視線を逸らしてしまいました。
 お互い、続く言葉をどうやって切り出したらいいのか迷いあぐねているのは一目瞭然ですが、小学校一年生の身分では有効な打開策が見つかるはずもありません。
 このままだと気まずくなるどころか、お友達の関係すらも怪しくなると知って、急遽話題を変えることに成功したのは、大人のお兄さんとお付き合いしている栞ちゃんならでは。
「そ、そうだ、今度、お父さんとお母さんがお出かけしちゃうのっ」
 咄嗟に思いついたことですが、嘘ではありません――そんな日は、だいたいお兄さんのところにお泊まりしているのもまた、事実と言えば事実ですが。
「だ、だからね――」
 どうしてこんなに頬っぺたが熱くなってしまうのか、何を真紀ちゃんに期待しているのかわかりませんでしたけれど、一度口をついてしまったものを今さら引っ込めるわけにもいかず、栞ちゃんはあれやこれやとまくし立てました。
「んーと……じゃあ、お泊まりしにくる?」
 栞ちゃんの言わんとするところを要約するに、お泊まりという結論に達した真紀ちゃんは、いつもと変わらない笑顔を覗かせていましたが、その頬っぺたが自分と同じくらい赤くなっているのを栞ちゃんは見逃しませんでした。
「う、うんっ! 真紀ちゃんのお家にお泊まりできるなんて夢みたい!」
 柄にないはしゃぎっぷりを披露する栞ちゃんと、柄にない照れ笑いを浮かべる真紀ちゃん――そのお泊まりがどんなだったのかは、いずれ語られることでしょうけれど、それはまた、別のお話ということで。
 今度こそ、お開きにすることといたしましょう。



つづく